研究課題/領域番号 |
22K09345
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
黒瀬 理恵 弘前大学, 医学研究科, 客員研究員 (30423990)
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研究分担者 |
澤井 高志 東北大学, 医学系研究科, 学術研究員 (00125577)
佐藤 孝 岩手医科大学, 医学部, 教授 (20170756)
黒瀬 顕 弘前大学, 医学研究科, 教授 (70244910)
石橋 恭之 弘前大学, 医学研究科, 教授 (80292142)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | CD14 / 関節リウマチ / 樹状細胞 / 滑膜組織 |
研究実績の概要 |
これまでの研究で、関節リウマチ(RA)滑膜組織には多数のCD14+細胞が存在し、電子顕微鏡を用いた研究ではRA滑膜組織内で樹状様に細胞突起を伸ばし隣接するリンパ球や形質細胞を抱え込む形態をしていることがわかった。さらに免疫組織学的染色を用いた研究では,RA滑膜組織sublining layerの血管周囲において、CD14+樹状形細胞はCD90+を示していたが、血管から離れるとCD90の発現は弱まっていた。一方HLA-DRは、血管から離れたところで強く発現していた。このことから我々はCD14+樹状形細胞がRA滑膜組織内で樹状細胞に分化する可能性があると考え、CD14+樹状形細胞の樹状細胞分化能について検討した。 ヒトRA滑膜細胞からD14highCD90int cellsをsortingし、樹状細胞分化培地で培養すると、HLA-DR+、CD83+発現細胞が増加した。また、IL-6、TNF-alfaの発現量も増加した。ヒトRA滑膜細胞とリンパ球を共培養すると滑膜細胞に多数のリンパ球が接着しpseudo-emperipolesis現象と考えられた。この現象は、樹状細胞へ分化させた滑膜細胞群でより多く観察された。 以上からCD14+樹状形細胞は滑膜局所で産生されるのではなく、骨髄造血幹細胞由来単球に由来し、循環血液を介して滑膜組織に入り,リンパ球との接触によって樹状細胞へ分化し機能していることが示唆された。 本研究のlimitationは,RA治療の進歩によって、未治療で活動性の高いRA患者のサンプルが十分でないことである。しかしながら、CD14+樹状形細胞の発生や分化について研究することは、RAにおける慢性炎症の病態について、細胞を基盤とした異なる視点が得られる。これは、既存の治療法に抵抗性を示す患者に対して、細胞を標的とした将来のRA治療法につながる可能性も期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の遂行には多くの関節リウマチのサンプルが必要であるが、近年の薬物療法の発展によって,疾患活動性が低い患者が多く研究に適したサンプルが少なくなっている.また関節リウマチの手術自体が減少しているため、サンプル採取も困難になっている。しかしながら本研究は時間をかけてサンプルを蓄積してきており、現在はほぼ予定通り遂行されている。今後もサンプルを集積していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
CD14+樹状形細胞による関節リウマチの病態形成への関わり、特に、臨床的に治療難治例でのCD14+樹状形細胞の関わりについて臨床データにも着目しながら、今後さらに追求していく予定である。また関節リウマチでは骨破壊の進行、関節機能の制限が臨床的に問題となる。我々の予備的実験ではパンヌス部に見られるCD14+細胞は、滑膜組織sublining layerに見られるものとは細胞形態が異なっており、この細胞が滑膜組織内のCD14+樹状形細胞を起源とするかどうかについても今後の研究課題の一つと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の遂行のために次年度も継続した研究が必要であり、次年度使用額は研究に必要な試薬の購入等に充てる予定である.
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