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2022 年度 実施状況報告書

ストレス応答タンパク質Nupr1の骨形成と骨の老化における機能及び制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K09360
研究機関佐賀大学

研究代表者

久木田 明子  佐賀大学, 医学部, 寄附講座教授 (30153266)

研究分担者 馬渡 正明  佐賀大学, 医学部, 教授 (80202357)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード骨細胞 / 細胞老化 / 骨芽細胞 / SMAD1 / セリンプロテアーゼ / 遺伝子欠損マウス / 酸化ストレス
研究実績の概要

加齢による骨量の減少は、高齢社のQOLにおいて大きな問題となっている。申請者らは、ストレス応答に関わる転写制御因子Nupr1遺伝子欠損(KO)マウスの解析から、Nupr1が骨形成や加齢による骨量減少と老化細胞の蓄積に関わることを見出した。Nupr1が骨細胞や一部の骨芽細胞で高く発現することから骨細胞の網羅的遺伝子発現比較解析を行ったところ、Nupr1 KOマウスの骨細胞でインスリン様成長因子(IGF)結合するタンパク質であるIGFBP6やHtrA1セリンプロテアーゼの発現が低下していた。IGFBP6やHtrA1はどちらも骨形成や老化に関連することが知られているが、RT-PCR法により野生型(WT)とNupr1KOマウスの骨細胞におけるIGFBP6とHtrA1の発現を調べたところ、特にHtrA1の発現がWTと比較し若齢と老齢KOマウスで顕著に低下することを見いだした。そこで、Nupr1の骨形成や老化細胞形成のメカニズムにどのようにHtrA1が関与するか解析を行った。HtrA1は初代骨芽細胞分化培養系において分化とともに発現が上昇したが、Nupr1KOマウスの骨芽細胞では分化初期よりその発現が低下しており、分化による発現上昇も見られなかった。Nupr1とHtrA1は骨芽細胞でTGFbetaの添加により発現が誘導されたが、Nupr1 KO骨芽細胞ではHtrA1は誘導されなかった。さらに、Nupr1KOマウスの骨芽細胞では分化で誘導されるSMAD1のリン酸化が顕著に亢進した。一方、過酸化水素を用いて骨芽細胞に酸化ストレスによる細胞老化を誘導したところ、Nupr1とHtrA1の両方の発現が誘導され、Nupr1を強発現するとHtrA1の発現が亢進した。これらのことより、Nupr1はHtrA1を介して、骨芽細胞の分化シグナルや老化細胞形成に関わることが考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

以前の申請者らの研究でNupr1KOマウスでは骨形成が亢進しており、Nupr1が骨形成を阻害することが考えられていた。一方、HtrA1セリンプロテアーゼもHtrA1KOマウスにおいて特に老齢マウスで骨量が増加することが報告されている。Nupr1KOマウスではHtrA1の発現が顕著に低下していたことやin vitroでNupr1の強発現がHtrA1の発現を上昇させることから、Nupr1の骨形成に対する作用はHtrA1の発現制御が関わっている可能性が考えられた。また、Nupr1の骨形成制御のメカニズムとしてSMAD1シグナル対する作用が関与しているがわかった。さらに、申請者らは、Nupr1が老化細胞形成に作用し加齢による骨量減少に関わることも見出していたが、HtrA1は老化細胞形成を誘導することも報告されており、Nupr1がHtrA1を介して老化細胞形成を亢進させる可能性が考えられた。このように、いずれもストレスによって誘導されることが知られていたタンパク質であるNupr1とHtRA1の新たな関係を見出した。

今後の研究の推進方策

Nupr1の骨形成や老化細胞形成のメカニズムについてさらに詳細に解析を行っていく予定である。HtrA1にはHtrA2,HtrA3,HtrA4の仲間があり、特にNupr1はHtrA1とHtrA3の発現の制御に関与していることを見出しているので、レンチウイルスを用いてHtrA1-4の発現を抑制あるいは強発現することにより、それぞれの骨芽細胞の分化や石灰化に対する影響を解析する。さらに、Nupr1とHtrA1は骨芽細胞の石灰化・最終分化に関与することも考えられているため、WTとNupr1KOマウスの骨のミネラル測定などを行い骨質の比較解析を行う。また、Nupr1阻害剤をin vitroの骨芽細胞分化系やマウスに投与した実験を行って、骨形成や老化細胞形成に対する効果を解析する予定である。

次年度使用額が生じた理由

今年度の末に論文が受理されたため、オープンアクセスの論文掲載費用に充てるには残りの金額が十分でなく、次年度の経費を合わせて論文掲載の費用に充てたいと考えている。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] INSERM(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      INSERM
  • [雑誌論文] Nupr1 deficiency downregulates HtrA1, enhances SMAD1 signaling, and suppresses age‐related bone loss in male mice2023

    • 著者名/発表者名
      Murayama Masatoshi、Hirata Hirohito、Shiraki Makoto、Iovanna Juan L.、Yamaza Takayoshi、Kukita Toshio、Komori Toshihisa、Moriishi Takeshi、Ueno Masaya、Morimoto Tadatsugu、Mawatari Masaaki、Kukita Akiko
    • 雑誌名

      Journal of Cellular Physiology

      巻: 238 ページ: 566~581

    • DOI

      10.1002/jcp.30949

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] <scp>miR</scp>‐92a‐3p encapsulated in bone metastatic mammary tumor cell?derived extracellular vesicles modulates mature osteoclast longevity2022

    • 著者名/発表者名
      Uehara Norihisa、Kyumoto‐Nakamura Yukari、Mikami Yoshikazu、Hayatsu Manabu、Sonoda Soichiro、Yamaza Takayoshi、Kukita Akiko、Kukita Toshio
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 113 ページ: 4219~4229

    • DOI

      10.1111/cas.15557

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A novel role of helix‐loop‐helix transcriptional factor Bhlhe40 in osteoclast activation2022

    • 著者名/発表者名
      Hirata Hirohito、Kamohara Asana、Murayama Masatoshi、Nishioka Kenichi、Honda Hiroaki、Urano Yasuteru、Soejima Hidenobu、Oki Shinya、Kukita Toshio、Kawano Shunsuke、Mawatari Masaaki、Kukita Akiko
    • 雑誌名

      Journal of Cellular Physiology

      巻: 237 ページ: 3912~3926

    • DOI

      10.1002/jcp.30844

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Leukemia/lymphoma-related factor (LRF) or osteoclast zinc finger protein (OCZF) overexpression promotes osteoclast survival by increasing Bcl-xl mRNA: A novel regulatory mechanism mediated by the RNA binding protein SAM68.2022

    • 著者名/発表者名
      Xu X, Shobuike T, Shiraki M, Kamohara A, Hirata H, Murayama M, Mawatari D, Ueno M, Morimoto T, Kukita T, Mawatari M, Kukita A
    • 雑誌名

      Lab Invest.

      巻: 102(9) ページ: 1000-1010

    • DOI

      10.1038/s41374-022-00792-w

    • 査読あり
  • [学会発表] Bone formation by mesenchymal stem cell in 3D hydrogel with an antibacterial dose of silver-containing calcium phosphate2023

    • 著者名/発表者名
      Masaya Ueno, Hiroshi Miyamoto, Sakumo Kii, Hirohito Hirata, Shunsuke Kawano, Akiko Kukita, Masaaki Mawatari
    • 学会等名
      Orthpaedic Research Society 2023 Annual Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Nupr1の老化細胞形成と骨芽細胞分化における役割2022

    • 著者名/発表者名
      村山雅俊、平田寛人、馬渡正明、久木田明子
    • 学会等名
      第40回日本骨代謝学会学術集会
  • [学会発表] ストレス応答キープレイヤーNupr1による新たな骨形成と細胞老化の制御機構2022

    • 著者名/発表者名
      村山雅俊、平田寛人、上野雅也、久木田明子、馬渡正明
    • 学会等名
      第37回日本整形外科学会基礎学術集会
  • [学会発表] 銀含有リン酸カルシウムは間葉系幹細胞の骨形成能と培地への抗菌性を両立させる2022

    • 著者名/発表者名
      上野雅也, 宮本比呂志, 村山雅俊, 記伊祥雲, 園畑素樹, 久木田明子, 馬渡正明
    • 学会等名
      第45回日本骨・関節感染症学会
  • [学会発表] 銀含有リン酸カルシウムの抗菌能・細胞毒性とMSC3次元培養への影響2022

    • 著者名/発表者名
      上野雅也, 宮本比呂志, 村山雅俊, 記伊祥雲, 久木田明子, 馬渡正明
    • 学会等名
      第37回日本整形外科学会基礎学術集会
  • [備考] 細胞老化と加齢による骨量減少の新しいメカニズムの解明

    • URL

      https://www.saga-u.ac.jp/koho/press/2023011728815

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公開日: 2023-12-25  

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