研究課題/領域番号 |
22K09369
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤田 諒 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (30908190)
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研究分担者 |
高畑 雅彦 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (40374368)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 難治骨折 / 幹細胞移植 / 乳歯歯髄由来幹細胞 |
研究実績の概要 |
初年度には、ラット放射線照射難治骨折モデルを確立し、乳歯歯髄由来幹細胞(SHED; Stem cells from Human Exfoliated Deciduous teeth)の移植によって、非移植側と比べて骨治癒促進効果が得られることを確認した。しかし、8週間経過しても完全な骨修復には至らなかったため、1)移植細胞数の増加、2)移植前培養条件の最適化を行った。移植細胞数の増加については担体の容積の問題もあり、2倍までしか増やせなかったが、それでは有意な骨修復促進効果の改善は認めなかった。前培養条件については既報を参考にAspirin, Desferal, Interferon γを添加した培地で、Luciferase遺伝子を導入したLuc-SHEDを培養し、マウスへ皮下移植した後、IVISイメージングで経時的に細胞生存率を検証したが、いずれも移植後の細胞生存率は有意に改善しなかった。SHEDの免疫原性は低いが、ヒト細胞のラットあるいはマウスへの移植実験(Xenograft)であることを考慮し、免疫不全マウスへSHEDを移植したところ細胞生存率が改善した。当初の計画どおり、ヒト乳歯由来のSHEDを免疫不全ラットF344-Il2rgem1Iexas放射線照射モデルに移植したところ、良好な骨治癒促進効果が得られることを確認した。同じモデルを用いて成人由来骨髄間葉系幹細胞(BMSC)を移植したところ、無細胞移植群と比較し、有意な修復改善効果を示さなかった。組織学的評価では、SHED移植群で骨孔周囲からの骨新生とHA/Col を核とした骨形成が多く見られたが、BMSC移植群や無細胞移植(コントロール)群では瘢痕組織と壊死骨が遺残しており放射線照射の影響で骨修復が阻害されていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨治癒促進に至適な移植条件はほぼ確立でき、使用する担体の種類や播種する細胞数、前培養条件などを決定している。骨再生実験にもっとも多く使用されている成人由来BMSCに対する優位性も確認することができており、2年目までの目標は達成できている。作用メカニズムの解明およびpotency 評価系の開発についてもすでに着手しており、細胞移植によるホストのレスポンスの網羅的遺伝子発現解析や免疫組織学的評価などの実験が進行中である。SHEDとBMSCの細胞自体の遺伝子発現や生理活性物質の分泌能に違いがあることも確認しており、SHEDが血管新生を誘導するのに優れた細胞であることを明らかにしている。今後の1年で目標とする作用メカニズムの解明とそれに基づくpotency 評価系の確立まで達成できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
SHEDは少なくとも移植後8週間以上、移植部位局所に生着、生存することを確認しているが、それ自体が骨芽細胞や血管内皮細胞などに分化していないことを確認しており、組織学的にはホストの治癒反応を促進していることが示唆された。この結果に基づき、RNAsequence技術を用いて、SHED移植, BMSC移植, 無細胞担体移植を行った際のホストのレスポンスを網羅的な遺伝子発現という点から解析する。さらに実際のホストの幹細胞のホーミングや骨芽細胞分化、血管新生の状態を免疫組織化学などの手法を用いて調査する予定である。これによってSHEDによる難治骨折に対する治癒促進作用機序の解明とそれに基づくpotency 評価系を確立する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定した試薬が国内在庫がなく、海外受注生産のため年度を跨いで入手予定となったため
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