研究課題/領域番号 |
22K09375
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
王谷 英達 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (60727965)
|
研究分担者 |
千々松 良太 岡山大学, 大学病院, 助教 (60803210)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 軟部肉腫 / エピゲノム / 融合遺伝子 |
研究実績の概要 |
軟部肉腫は若年~中高年に発症する希少悪性腫瘍で50を超える組織型から成る疾患群です。明細胞肉腫(CCS)はその中の1亜型であり、EWS-ATF1融合遺伝子が腫瘍発生の原因となっていることが知られています。EWS-ATF1による発がんメカニズムは詳しくは解明されておりません。本研究の目的は①EWS-ATF1の発癌メカニズムの解析および②EWS-ATF1の発現制御メカニズムの解析です。本年度はEWS-ATF1の発現制御メカニズムについて解析を行いました。FDA承認薬によるハイスループットスクリーニングを行い、HDAC阻害薬がCCSの増殖抑制に有効である事、EWS-ATF1の発現を抑制することを発見しました。そのメカニズムとして、クロマチン免疫沈降シークエンス解析により本来HDAC阻害薬はヒストンのアセチル化を亢進させる薬ですがEWS-ATF1遺伝子のプロモーター領域ではヒストンのアセチル化が低下していることがわかりました。次にクロマチン構造解析によりヒストンアセチル化によるクロマチン構造の変化を調べましたがEWS-ATF1遺伝子のプロモーター領域で著明なクロマチン凝集は認められず、クロマチン構造変化以外のメカニズムによるEWS-ATF1遺伝子発現抑制が考えられました。ヒストンアセチル化低下によるクロマチン構造変化以外のメカニズムとして転写開始に係るブロモドメイン蛋白(BRD4)の変化について検討したところ、EWS-ATF1遺伝子のプロモーター領域でBRD4タンパクの結合低下が認められ、BRD4蛋白の結合低下によりEWS-ATF1遺伝子の発現が抑制されていることがわかりました。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CCSの疾患融合遺伝子EWS-ATF1の発現低下メカニズムの一端を解明できており、概ね予定通りの進行状況です。
|
今後の研究の推進方策 |
EWS-ATF1遺伝子の発現制御に係る別のメカニズムの解明および発現抑制を増強する方法を検討する。またEWS-ATF1融合遺伝子による発がんメカニズムについて研究を進めていく。
|