研究課題/領域番号 |
22K09379
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中佐 智幸 広島大学, 医系科学研究科(医), 寄附講座准教授 (60467769)
|
研究分担者 |
石川 正和 香川大学, 医学部, 教授 (60372158)
味八木 茂 広島大学, 病院(医), 特定教授 (10392490)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 関節軟骨 / 骨棘 / 変形性関節症 |
研究実績の概要 |
人工膝関節置換術で廃棄される関節軟骨と骨棘を採取した。切片を作製し、組織学的評価を行った。骨棘軟骨もⅡ型コラーゲンの発現を認めたがX型コラーゲンの発現は骨棘軟骨の方が関節軟骨より多かった。Ki67の発現を調べたところ、骨棘軟骨の方が発現が多かった。関節軟骨・骨棘軟骨からRNAを抽出し、RNAシークエンスを行ったところ、骨棘軟骨では、関節軟骨より骨形成を促す遺伝子発現が強かったが、COL2A1、SOX9、ACANの発現に差はなかった。 それぞれを約1mm3に細切し、アテロコラーゲンゲルに包埋してそれぞれ3、6週間培養する群とそれぞれの軟骨から酵素処理により細胞を単離し、アテロコラーゲンゲルに包埋し、3、6週間培養する群を作製した。切片を作製し、サフラニンO染色とHE染色を行った。ゲル内に遊走している細胞はLECT1陽性細胞であり、軟骨細胞であった。細胞数を計測したところ、細切した軟骨は両群とも3週より6週で有意に増加していた。6週まで培養しても軟骨組織が骨化することはなかった。関節軟骨、骨棘軟骨から軟骨細胞を単離し、MTTアッセイにより細胞増殖能を比較したところ、骨棘軟骨の方が関節軟骨より増殖能が大きかった。さらにゲル内のプロテオグリカン量を計測すると骨棘軟骨でも関節軟骨と同程度のプロテオグリカン量をゲル内に有することがわかった。これらの結果から、骨棘軟骨の方が関節軟骨より遊走能が高く、ゲル内で骨棘由来の軟骨細胞であってもプロテオグリカンを産生することがわかった。以上をまとめ、国際誌に投稿し、採択された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関節軟骨と骨棘軟骨との性質の差を示し、関節軟骨修復に際して、骨棘軟骨を用いても関節軟骨と同程度の修復が得られる可能性があることをまず証明することを目的としており、RNAシークエンスによる網羅的な遺伝子発現解析により、骨棘軟骨は関節軟骨と同じ軟骨としての特徴を有していることを明らかにできた。また、関節軟骨再生に使用するアテロコラーゲンゲル内に骨棘軟骨を包埋して培養したところ、ゲル内に軟骨基質を産生することを確認できた。当初、骨棘軟骨が軟骨基質を産生できるのか不明で、軟骨基質をゲル内に産生できないとなると研究の進行が滞ると思っていたため、in vitroの実験はほぼ予定通り進めることができた。ゲル内に遊走している細胞が軟骨細胞であることを示す必要があったが、免疫染色も問題なく行うことができ、良好な結果を得ることができた。In vitroの実験はほぼ予定通り進んでおり、in vivoの実験を行う準備を併せて行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの実験で、骨棘軟骨由来の細切軟骨により、ゲル内に軟骨細胞が遊走しプロテオグリカンを産生することがわかった。また、軟骨特異的遺伝子であるCOL2A1、SOX9、ACANの発現は骨棘軟骨と関節軟骨で同等であった。つまり、関節軟骨修復の細胞源として有用である可能性が示唆されたので、今後は、実際に日本白色家兎の軟骨欠損部に骨棘軟骨を移植してその治療効果を検証する予定である。RNAシークエンスの結果から骨棘軟骨は、関節軟骨の要素を持ちながら、関節軟骨より骨形成の要素が強いことがわかったため、骨形成を抑制するmicroRNAを制御することでより骨棘軟骨を関節軟骨に近づけることを目指していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
RNAシークエンスを行うため、外注しようとしたが、RNAの調整といったサンプルの準備に時間がかかり、年度内にサンプルを提出することができなかったため、このRNAシークエンス用の費用を次年度に繰り越すこととなった。
|