研究課題/領域番号 |
22K09382
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山田 久方 九州大学, 医学研究院, 准教授 (20363369)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / 滑膜 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
本年度はまず、変形性関節症から人工関節手術時に採取した滑膜マクロファージを、滑膜常在性マクロファージとして代用することの妥当性についての検討から行った。なお細胞採取と同時に組織標本も作成し、病理学的に明らかな炎症所見が見られない検体を選択し、解析に用いた。これらの検体から分離した滑膜マクロファージは既報の滑膜常在性マクロファージと同様の表現型を呈していることが確認された。そこで次に血液中の単球から誘導された炎症性M1型マクロファージ、非炎症性M2型マクロファージとの比較を行ったところ、滑膜常在性マクロファージはこれら両者の特徴が混在する、独特の表現系を呈することがわかった。サイトカイン遺伝子の発現パターンも同様であった。 これらの基盤データを踏まえ、滑膜常在性マロファージを関節リウマチに関連する炎症刺激、すなわち免疫複合体を模した固相化IgG刺激、および既報の各種サイトカイン刺激による表現型、遺伝子発現の変化を、種々の実験条件で検討を行った。その結果、いずれの刺激条件においても滑膜常在性マクロファージは血液中単球由来のマクロファージに比べて反応性が乏しい傾向にあることが判明したが、これについては更なる検討が必要である。また、研究費の前倒し支払い請求を行い、マイクロアレイ法による滑膜常在性マクロファージも網羅的遺伝子発現変化解析の予備研究も行ったが、これからもおおむね同様の結果が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変形性関節症に対する人工関節手術件数は多かったため、滑膜常在性マクロファージの性状についての解析はスムーズに進めることができた。培養実験を行うには十分な細胞数でないことも多かったが、それについては今後も検討を継続することで対応可能と思われる。一方、関節リウマチ患者由来の各種細胞を用いる実験については、これに対する手術数が従来に比べて大きく減少しており、進捗が予定をやや下回っている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
変形性関節症患者由来の細胞を用いた解析は、今後も予定通り進めてゆくことにより、十分に目標を達成することができると考えている。関節リウマチ患者検体を用いた解析についても、今後も症例を蓄積し、基本的には現在の計画を進めてゆく。新型コロナ感染流行の収束とともに手術数も再び増加する可能性が考えられる。ただし、ある程度の研究規模の縮小は選択肢である。また、関節リウマチについては、網羅的解析手法を用いた研究が次々に報告されており、滑膜細胞に関する大量の情報がパブリックデータベースに蓄積されている。これらも適宜研究に取り入れることで目標達成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度中に一時外部委託検査などで予定を上回るペースの支出があり、研究の進捗次第では年度中の研究費が不足する可能性があったため、前倒し支払い請求を行いました。しかし結局当初予定通りの支出で4年度中は済んだため、次年度使用額が生じることになりました。よって次年度使用額分は本年度に当初予定通り使用させていただきます。
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