研究課題
本年度は初年度で手法を確立した、ヒト関節滑膜常在性マクロファージ、末梢血単球由来マクロファージの培養実験を継続し、各種解析データを集積した。まずコントロール群である末梢血単球由来マクロファージは、固相化IgG刺激やTNF-a, IFN-gなど各種 サイトカイン刺激によって、表面抗原の発現や、各種マーカー遺伝子の発現パターンが炎症性に変化することをフローサイトメーター、定量RT-PCR解析で確認した。実際、機能的にも炎症性サイトカインの発現が上昇し、共培養した滑膜線維芽細胞の機能をも炎症性に変化させるなど、炎症性マクロファージへの分化することがわかった。これは関節リウマチ滑膜局所に集簇する、血中単球由来マクロファージに類似するものと考えられる。一方、滑膜常在性マクロファージにおいては、上記の刺激を加えて培養した後も表面抗原や各種マーカー遺伝子の発現パターンにはほとんど変化が見られなかった。しかし機能的には炎症性サイトカイン遺伝子の発現が軽度上昇しており、これは滑膜線維芽細胞の共培養実験でも確認された。すなわち定常状態では組織恒常性の維持に働く滑膜常在性マクロファージは、関節リウマチなどの炎症状況下では表現系は保ったままで機能を変化させ、炎症の増悪に働いていることが示唆された。実際の関節リウマチの関節滑膜でも組織学的に同様の表現系のマクロファージが観察されており、これらも治療標的となりうることが本研究から明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
培養に用いる細胞数の見直しなどにより、本年度の研究はほぼ計画通りに進行し、十分な成果を得ることはできた。ただしマイクロアレイ法による網羅的遺伝子解析については、サンプルのクオリティに問題があることも多く、十分な数に達していない。今後もサンプル数を増やして解析を継続する。
最終年度では当初計画の中で、まだ十分に解析が進んでいない遺伝子発現解析、T細胞の培養実験を進めるとともに、今までの研究成果の発表を中心に活動を行う。
遺伝子解析実験のに使用可能な臨床検体の入手に問題があったこと、その他の実験系においては実験手法の改善により、消耗品の使用量を減ずることが可能になったことなどから次年度使用額が生じた。しかし残りの研究計画の遂行により、残額は全て使用する予定になっている。
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Immunological Medicine
巻: Jan 3 ページ: 1-10
10.1080/25785826.2023.2300853