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2022 年度 実施状況報告書

キメラがんタンパクの多層的腫瘍関連機構の解明と治療への応用を目指した基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K09384
研究機関和歌山県立医科大学

研究代表者

及川 恒輔  和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (70348803)

研究分担者 佐藤 冬樹  静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (60400131)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード粘液型脂肪肉腫 / キメラがんタンパク / 分子標的治療
研究実績の概要

骨軟部腫瘍のキメラ遺伝子は組織型ごとに特異的なものが多いが、それらは腫瘍の発生や進展に関与すると考えられる。一方、そのキメラ遺伝子を構成する遺伝子は機能的に共通する特徴を持つものも多いことから、様々な骨軟部腫瘍における共通の分子機構の存在も想定される。本研究は、粘液型脂肪肉腫特異的キメラがんタンパクTLS/FUS-CHOPの新規腫瘍関連機構の解明を通じて、様々な骨軟部腫瘍に共通する分子機構の同定とそれを利用した新規治療法開発への糸口をつかむことを目的とする。
1. 次世代シークエンサーを用いたTLS/FUS-CHOPの新規下流分子の同定とその機能解析。現在、RNA-seq解析において粘液型脂肪肉腫細胞でTLS/FUS-CHOPをノックダウンした際に発現変動が見られたRNA群から、腫瘍関連機構への関与が期待される既知分子群の粘液型脂肪肉腫における機能を解析中である。その結果の一部は日本分子生物学会年会で発表した。
2. TLS/FUS-CHOPのサーカディアンリズムへの影響に起因する腫瘍関連機構の検討。予備的な実験によりTLS/FUS-CHOPが概日時計タンパク質DEC1を発現抑制することが示唆されたため、研究分担者の佐藤博士とともにDEC1の機能およびDEC1とTLS/FUS-CHOPとの相互作用の解析を進めている。(Sato et al., Mol. Med. Rep. 2022)。
3. TLS/FUSと結合するlong noncoding RNA (lncRNA)の機能発現における腫瘍関連機構の探索。研究代表者らが作成したTLS/FUS-CHOP抗体は量が限られているため、まず、通常は発現していないCHOPの抗体をTLS/FUS-CHOP抗体と同等なものとしてRIP-seq/CLIP-seqなどで利用できないか市販のCHOP抗体を検討し、それが有効である可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究項目1の「次世代シークエンサーを用いたTLS/FUS-CHOPの新規下流分子の同定とその機能解析」については、RNA-seq解析においてピックアップされた分子のうち、粘液型脂肪肉腫の腫瘍関連機構に関与する可能性のある新規TLS/FUS-CHOP下流分子群の解析を精力的に進めているところであり、その中でも新規下流分子の候補の一つであるSOX11については学会発表も出来ていることから、順調に進捗していると考える。
また、研究項目2の「TLS/FUS-CHOPのサーカディアンリズムへの影響に起因する腫瘍関連機構の検討」において、概日時計タンパク質DEC1とTLS/FUS-CHOPとの関連の解析については、現在、今後の詳細な研究戦略を検討中である。しかし、その前段階としてのDEC1の新規機能については論文として報告できているため(Sato et al., Mol. Med. Rep. 2022)、まずまずの進捗状況であると考える。
さらに、研究3の「TLS/FUSと結合するlong noncoding RNA (lncRNA)の機能発現における腫瘍関連機構の探索」については、RIP-seq/CLIP-seq解析などによりTLS/FUS-CHOPと結合するlncRNA群を同定するために、まず、その実験での使用目的に耐えるTLS/FUS-CHOP抗体が必要となるが、以前、研究代表者らが作ったTLS/FUS-CHOP特異抗体は量に限りがある。しかし、TLS/FUS-CHOP抗体は市販されていない。そこで、通常は発現していない正常CHOPの抗体をTLS/FUS-CHOP抗体と同等に使えるかどうかを検討し、その使用に耐える可能性がある市販のCHOP抗体を同定した。今後、この抗体を用いることで本項目の研究が進むことが期待される。
以上より、全体として概ね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

研究項目1の「次世代シークエンサーを用いたTLS/FUS-CHOPの新規下流分子の同定とその機能解析」については、現在、RNA-seq解析によりピックアップされた新規TLS/FUS-CHOP下流分子の候補群の解析を進めているが、その中で特に、TLS/FUS-CHOPノックダウンで最もそのmRNAの減少率が高かった転写因子SOX11に着目している。SOX11は様々な腫瘍において様々な腫瘍関連機能が知られているが、粘液型脂肪肉腫における機能はまだほとんど知られていない。従って、粘液型脂肪肉腫細胞におけるSOX11の発現制御機構の解析とSOX11に転写制御を受ける腫瘍関連遺伝子群の同定を最優先で進めていく。
研究項目2の「TLS/FUS-CHOPのサーカディアンリズムへの影響に起因する腫瘍関連機構の検討」に関しては、引き続き概日時計タンパク質DEC1に着目した研究を進めていくが、DEC1自体の新規機能の検討を進めるとともに、既に予備的な実験によって示唆されているTLS/FUS-CHOPによるDEC1の発現抑制について、粘液型脂肪肉腫由来培養細胞を用いた詳細な解析を進めていく。
研究3の「TLS/FUSと結合するlong noncoding RNA (lncRNA)の機能発現における腫瘍関連機構の探索」については、上記研究項目1のRNA-seqによりTLS/FUS-CHOPノックダウンで発現が変化するlncRNAが多数挙がってきているが、lncRNAには機能未知のものも多いため、それらのlncRNAに関する既報文献の検索を行うとともに、2022年度にTLS/FUS-CHOP特異抗体と同等に利用できる可能性を見い出した市販のCHOP抗体を用いてRIP-seq/CLIP-seq解析などを行うことにより、TLS/FUS-CHOPと結合して腫瘍関連の機能を持つlncRNA群の同定を目指す。

次年度使用額が生じた理由

2022年度にさらに数種の粘液型脂肪肉腫由来培養細胞を用いたRNA-seq解析を行う心づもりでそのための予算をとっておいたが、その際にコントロールとして用いる細胞種として、間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞、脂肪細胞、あるいは、おそらく粘液型脂肪肉腫発生の直前であると考えられる脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化過程におけるどこかの段階の細胞のどれを用いるのが良いかの選択に躊躇している間に年度を超えたため、次年度使用予算が生じた。その予算分について、2023年度に当初予定のRNA-seq解析を遂行するかどうかはまだ未確定だが、様々な検討の結果として新たなRNA-seq解析を行わないことにした場合には、当該予算は、研究遂行上必要となる様々な消耗品の費用などに活用する。
また、研究分担者の佐藤冬樹博士使用分の次年度使用予算については、2023年度に論文掲載料に使用する予定で繰り越した。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Differential immunohistochemical expression of DEC1, CK?1ε, and CD44 in oral atypical squamous epithelium and carcinoma <i>in?situ</i>2022

    • 著者名/発表者名
      Sato Fuyuki、Bhawal Ujjal、Osaki Shoko、Sugiyama Nao、Oikawa Kosuke、Muragaki Yasuteru
    • 雑誌名

      Molecular Medicine Reports

      巻: 25 ページ: ー

    • DOI

      10.3892/mmr.2022.12676

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] A novel molecular mechanism for inhibition of anti-tumor cytokine IL-24 expression in myxoid liposarcoma cells.2022

    • 著者名/発表者名
      Kosuke Oikawa, Fuyuki Sato, Masahiko Kuroda, Shogo Ehata.
    • 学会等名
      第81回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] 粘液型脂肪肉腫特異的キメラがんタンパクTLS-CHOPの新規下流分子SOX11の同定2022

    • 著者名/発表者名
      及川恒輔、黒田雅彦、村垣泰光、江幡正悟
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会

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公開日: 2023-12-25  

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