研究課題/領域番号 |
22K09389
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
大西 英生 産業医科大学, 医学部, 非常勤医師 (20279342)
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研究分担者 |
上田 陽一 産業医科大学, 医学部, 教授 (10232745)
川崎 展 産業医科大学, 医学部, 講師 (40644860)
鈴木 仁士 産業医科大学, 医学部, 講師 (80644880)
松浦 孝紀 産業医科大学, 医学部, 非常勤医師 (90821679)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | OXT-mRFP1 / 線維筋痛症 / von Frey test / 強制水泳テスト / 背側縫線核 / 青斑核 |
研究実績の概要 |
オキシトシン(OXT)を改変赤色蛍光タンパク(mRFP1)で標識したmRFP1トランスジェニック(Tg)ラットを用いて線維筋痛症(FM)モデルラットにおけるOXTの発現動態、痛覚閾値やうつ様行動の評価を行った。雄性8週齢のOXT-mRFP1 Tgラットを用いて、レセルピン(1mg/kg)を3日間連日皮下投与しFMモデル(FM群)を作成した。FMモデル作成前後でのvon Frey testによる後肢の痛覚閾値ならびに強制水泳テストによる不動時間の経時変化を記録した。強制水泳テストではビデオ・トラッキング・ソフトウェアによる自動行動解析システムを用いたが、ラットを認識できなかったため、不動時間を手動で計測を行った。FM群の痛覚閾値はコントロール群と比較して注射終了後1、3、5、7、10、14及び17日で有意に低下した。FM群の不動時間はコントロール群と比較して注射終了後1、3及び5日で有意に延長した。さらに、注射終了後6日にラットを灌流固定し、SON、PVN、DR及びLCを含む脳切片と第5腰髄(L5)レベルの脊髄切片を作成した。SON、PVNにおけるOXT-mRFP1蛍光輝度ならびにL5脊髄後角I-II層におけるOXT-mRFP1陽性顆粒数を蛍光顕微鏡で観察し評価した。結果、FM群のSON、PVNにおける蛍光輝度はコントロール群と比較して有意差はなかったが、L5脊髄後角I-II層におけるOXT-mRFP1陽性顆粒数は、コントロール群と比較して有意に増加していた。下行性疼痛抑制系の評価として、背側縫線核(DR)は抗トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH)抗体、青斑核(LC)は抗チロシンヒドロキシラーゼ(TH)抗体による免疫組織化学的染色(IHC)を行い、IHC陽性細胞数を計数した。結果、注射終了後6日において、FM群のDRにおけるTPH陽性細胞数、LCにおけるTH陽性細胞数は、コントロール群と比較して有意に減少していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OXT-mRFP1 Tg ラットにおいてFMモデルを作成し、疼痛閾値の低下、不動時間の延長を確認することでFMモデルラットがTgラットでも作成できることを確認した。また、FMモデルラットにおいてTPH陽性細胞数、TH陽性細胞数は減少しており、以前の報告であるモノアミンの枯渇という点でも矛盾はなかった。FM群のL5脊髄後角I-II層におけるOXT-mRFP1陽性顆粒数は、コントロール群と比較して有意に増加していたが、FMモデルラットにおけるOXTの発現動態は、蛍光輝度では有意差は認めなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、OXT-mRFP1の蛍光輝度が注射終了後6日で有意差がなかったため、タイムコースを変更して蛍光輝度の評価を行う。またOXT-mRFP1 Tgラットを用いたFMモデルを作成し凍結脳切片を用いたin situハイブリダイゼーションを行い、視床下部SON及びPVNにおけるOXT mRNA発現レベルの定量評価を行う。続いて、OXT-mRFP1 Tgラットを用いたFMモデルを用いて電気生理学的手法を用いたOXTニューロン可塑性の評価を行う予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度はCOVID-19流行の影響による若干の実験の遅れ、および備品・消耗品購入の遅延があり、翌年度に繰り越しした。令和5年度は、OXT-mRFP1 Tgラットを用いたFMモデルを作成し、分子生物学的実験を行う予定で、それに伴う物品購入を予定している。
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