研究課題/領域番号 |
22K09391
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
山崎 悟 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (70348796)
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研究分担者 |
新谷 泰範 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (20712243)
高橋 佑典 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 上級研究員 (70880912)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | サルコペニア / フレイル / 神経筋接合部 / 空胞 |
研究実績の概要 |
マウスAIPIDは膜貫通部位1か所の2型膜タンパク質である。生化学的解析を進める中で、細胞外領域であるC末の欠損変異体を発現させると、ミオシンATPaseであるMYK-461処理をして拍動停止した心筋細胞でもSTAT3のリン酸化がみられ、恒常活性化型の変異体であることを見出した(→C-del)。予備的な検討として、心臓以外に骨格筋組織でAIPIDの発現が特異的にみられること、および骨格筋をさらにみると、神経筋接合部(Neuro-Muscular junction: NMJ)へ特異的な局在を示すことを明らかにしてきた。そこで初年度は、上記のC-del、WT、およびGFP(Mock)をAAVウイルスベクターで発現する系を構築し、それそれを8週齢マウスにおける下肢の前脛骨筋(TA)に、~5 × 109 viral genome/マウスの濃度で、50 uLを局所導入した。その後、8週間経過観察した後、骨格筋組織(TA)を回収を行った。その結果、まず、明らかな異常は見られなかった。続いて、回収した組織よりタンパク質を抽出し、Western blot法により、それぞれのAAV導入個体における導入遺伝子の発現評価を行った。その結果、どの群においても安定に発現していることを確認した。さらに、一部については凍結切片を作製したので、まずAIPIDの免疫染色を行った。その結果、NMJの筋肉側のマーカーであるαブンガロトキシンと共局在することが示された。続いて、ヘマトキシリン・エオジン染色により組織の形態を評価すると、WTとC-delにおうて“空胞”が見られた。そこで、Gomoriトリクローム染色を行うと先ほどの空胞部分は、赤紫で染色された構造体が観察される結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、骨格筋へのAAVウイルス導入におけるウイルス濃度の欠点に時間がかかる可能性が予想されたが、実際には、概要に記述した濃度でうまく最適化、すなわち導入遺伝子がコードするAIPIDの発現量がうまくコントロールされたといえる。そして、これまでのところ導入による炎症などの明らかな障害は見られないが、組織レベルで変化があることも確認され、AIPIDの骨格筋における役割が想定された。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、骨格筋組織で観察された赤紫で染色された構造体は、病理学的には“縁取り空胞”あるいは“細管集合体(tubular aggregates)であるのかどうかを決定するために、NAD-TR染色法や透過型の電子顕微鏡観察を試みる。さらに、AAV導入個体の生理学的な機能を調べるために、組織レベルにおける筋力測定を行う予定である。
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