傍脊柱筋の変性は、脊柱後弯症の原因として関連が報告され、骨格筋内の酸化ストレスが変性の一因と考える。我々は、これまでにマウス骨格筋において活性酸素種のスーパーオキシドとミトコンドリアに局在する抗酸化酵素のSOD2が病理的に重要な役割を果たしていることを解明した。今回、傍脊柱筋の酸化ストレスと脊椎アライメント、骨格筋パラメータ、ミトコンドリア機能との関係を調査した。腰椎手術患者から多裂筋をサンプルとして採取し、スーパーオキシド(発光強度)とSOD2(蛋白量)を測定した。また、これらの比をSOD2レドックス指数(SOD2RI)と呼び、酸化ストレスの指標とした。患者は、SOD2RIの平均値で2群に分け、脊椎アライメント、骨格筋パラメータ、SDH染色強度(SDHmgv)を2群間で比較した。2群間で有意差を示した変数については、重回帰分析により年齢による交絡を調整した。全ての解析は男女別に行った。35名(男性22名:平均57.9歳、女性13名:平均70.2歳)の腰椎手術患者が対象となった。酸化ストレスや脊柱アライメントに影響を及ぼす疾患を持つ患者は除外した。男性ではいずれのパラメータにおいても両群間に有意差は認められなかったが、女性ではSOD2RIが高い群は低い群と比べて、腰椎前弯が大きく(P<0.05)、握力が低く(P<0.01)、SDHmgvが高かった(P<0.01)。また重回帰分析の結果より、女性患者においてSOD2RIは腰椎前弯、握力、SDHmgvの独立した説明変数であった。女性の腰椎変性疾患患者において、傍脊柱筋のSOD2関連酸化ストレスはミトコンドリア機能障害および握力低下と関連していた。骨格筋のミトコンドリアにおける酸化ストレスの上昇は、筋量低下よりも筋質低下と関連しており、多裂筋の筋力低下に酸化ストレスの関与が示唆された。
|