研究課題/領域番号 |
22K09413
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
小野寺 勇太 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (30510911)
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研究分担者 |
寺村 岳士 近畿大学, 大学病院, 准教授 (40460901)
竹原 俊幸 近畿大学, 大学病院, 助教 (60580561)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 老化 / 間葉系幹細胞 / 骨髄組織 / 脂肪 / 脂肪髄 / アンチエイジング |
研究実績の概要 |
骨髄組織は骨・軟骨組織や造血・免疫機能の維持に重要な組織である。中でも骨髄由来間葉系幹細胞(Bone Marrow derived Mesnchymal Stem Cell : BMMSC)は骨髄の恒常性維持になくてはならない細胞の一つとして知られている。加齢に伴う骨髄組織の脂肪髄化は、高頻度に観察される現象であり、BMMSCの脂肪細胞へと分化することが一つの原因であると考えられている。しかし、加齢と共にBMMSCが脂肪細胞へと分化し脂肪髄化するという現象の詳細なメカニズムは知られていない。 研究代表者は、LC/MS/MSによるプロテオミクス解析の結果、加齢性脂肪分化を引き起こしうる分子としてLyarを同定した。Lyarは脂肪分化の強力なリプレッサーであり、強制発現により脂肪分化がほぼ完全に抑制される。一方で、Lyarの遺伝子発現を抑制することで脂肪分化は促進された。加齢マウスにおける骨髄組織、筋組織ではLyarの発現低下が認められた。また、ごく少ないサンプル数ではあるものの、ヒトの検体においても同様の遺伝子発現が確認されており、今後サンプル数を増やして検証していく予定である。このことより、加齢に伴う骨髄組織、筋組織に認められる脂肪組織の形成・蓄積の原因の一つとして、Lyarの発現低下が考えられる。Lyarの発現制御が可能となれば、骨髄組織、筋組織の加齢性脂肪分化の解決策として重要な要素であると示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画初年度は、先行研究で行ったcoIP-MS解析(ショットガン解析)より、細胞増殖・分化制御因子Tak1と直接相互作用する分子としてLyarを同定した。 Lyarの抑制はBMMSCの増殖を抑制した。また、Lyarを恒常的に発現させたBMMSCを作製し、脂肪細胞へと分化誘導を行ったところ脂肪細胞分化は著しく抑制された。Pparγ、Ucp2、Apod、Fabp4/5など脂肪分化・成熟関連遺伝子の抑制がqPCRによって認められた。加齢マウスBMMSCでは、若齢マウスに比べLyarの発現が有意に低下していた。 本研究にご理解・同意頂いた患者様より採取された骨髄組織のLYARと脂肪関連遺伝子(CEBPα, FABP4, PPARγ)の遺伝子発現解析より、LYARの遺伝子発現と脂肪関連遺伝子の発現量には負の相関性が認められ、採取された骨髄・筋組織および樹立された間葉系幹細胞・筋衛星細胞の遺伝子発現解析を順次行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究成果から骨髄組織におけるLyarと脂肪分化の関係性についてその一端が解明された。しかし、加齢に伴う組織の脂肪化は骨髄組織だけでなく筋組織でも起きる(サルコペニア)こと、さらには加齢性の筋骨連関の詳細な機序は知られていない。そこで、次年度は、プロテオミクス解析から同定したLyarの発現低下が筋組織の脂肪化を進行させる、つまりサルコペニアの進行に寄与しているのではないかと仮説を立て、筋組織においても検証をする予定である。 近年、健康寿命の維持を目的として筋骨連関の注目されている。筋組織においてもLyarの機能が解明出来れば、Lyarを制御する上流因子の特定、Lyar自身の機能 理解の一助になると考えられる。また、加齢と共に脂肪化する骨髄組織と筋組織の関係性の理解に繋がることが期待される。若齢 / 加齢マウスの筋組織を回収し、Lyarの遺伝子発現が加齢と共に低下していることを確認している。さらにFACSを用いて、筋組織から筋前駆細胞(Itga7 + / CD29 + / Lineage -)を回収し、Lyarの遺伝子発現制御が筋前駆細胞に与える影響の検討を進めている。 また、さらには投薬治療による脂肪髄化の抑制を実施すべく、加齢マウスによる条件検討を開始している。μCTによる画像解析や切片による組織学的解析を実施する予定でいる。
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