研究実績の概要 |
前年度は、慢性疼痛下ではCGRPを伝達物質とした小型神経細胞の役割が大きく、腰部DRGのなかでL4DRGの関与が高いことがわかった。本研究で使用している神経障害性疼痛(SNI)モデルではL4DRGを治療標的にする必要がある。 今年度は、野生型マウスを使用してSNIモデルを作製し、損傷3週に患側、健側のL4DRGを単離してRNAを抽出した。コネキシンアイソフォームであるGja1, 3, 4, 5, 8, 10, Gjc1, Gjd2のプライマーを設計してreal-time PCRを実施し、発現量を患健差で比較した。その結果、Gja3, 4, 5の発現変化はなく、Gja1、Gja8、Gjd2は健側よりも低下、Gja10、Gjc1の発現が高いことがわかった。 さらに今年度、Sox10-Venusマウスの腰部DRGからVenus陽性細胞のソーティングに成功した。Sox10-Venusマウスの左後肢に神経障害性疼痛モデルを作製し、損傷後3週でL4DRGを単離して患側と健側にわけ、FACS Verse system (BD)を用いてVenus陽性細胞をソーティングした。Venus陽性細胞を回収し、RNAを抽出することができた。コネキシンアイソフォームの中でGjc1のRNA発現は、健側と比較して患側で約4倍発現が高かった。 ギャップ結合を構成するGjc1はCx45ともいわれ、心筋での発現が高い。最近では、脊髄での発現が報告されている(Lozic M et al., Int J Mol Sci. 2021)が、DRGでの役割は不明である。これら研究結果から神経損傷後、DRGのSGCでギャップ結合の発現過剰が契機となり、小型神経細胞死が誘導されている可能性がある。最終年度、コネキシンアイソフォームが慢性疼痛時の新規標的分子であることを明らかにし、ニューロン、グリア細胞連関を報告する予定である。
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