研究課題/領域番号 |
22K09420
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
林 克洋 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任教授 (80507054)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ヨード担持加工 / 脂肪由来幹細胞 / 感染 / バイオインプラント |
研究実績の概要 |
インプラントの感染耐性をあげ、感染の治療にも直接使用でき、かつ骨再生能力の高い新規バイオインプラントを開発、臨床応用を目的とした実験を計画した。我々の開発したヨード担持チタンは、抗菌作用がありかつ、生体内で使用すると骨親和性が高いことが偶然発見された。これに着目し、インプラントに感染耐性のある幹細胞を付加することで、非常に独自性の高い感染抵抗性バイオインプラントの開発を行うこととした。 初年度として、インプラントに使用する素材の選定と、ヨード担持の方法を確立することからはじめた。純チタン片4cm2x5を用意し、表裏ヨード担持加工(陽極酸化処理、酸処理、ヨウ素処理)した。島津製作所製の蛍光X線分析装置で担持ヨード量を測定したところ、チタン64合金の平均値15μg/c㎡±2に対して担持量の平均は13.6μg/c㎡で、純チタンは12~13μg/c㎡±2前後であり、想定内のヨード担持が可能であった。 更に、実際に生体内骨形成に有利な形状のインプラントを模索し、海綿骨と類似した多孔質耕造をもつ、チタン製トライタニウム(Stryker)を使用することにした。加工方法は多孔質構造面重視(ヨウ素担持量確保)とヨウ素担持量確保(多孔質構造及びスムーズ面)を検討したが、TESTピースで試した結果、試料の大きさが小さく、冷却装置の許容範囲で熱の上昇が抑えられると判断し、ヨウ素担持量確保(酸化皮膜形成後、ヨウ素担持加工)を施し、多孔面66.3μg/c㎡、平面21.5μg/c㎡の担持が可能であった。トライタニウムを1cm3大に切断し、生体内で使用予定の3片にヨード担持を行い、平均95.2μg/c㎡、51.9μg/c㎡と十分な担持に成功した。現在金属の上に脂肪由来幹細胞の培養の生着を確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイオインプラントの幹となる多孔質チタンの選定および、ヨード担持に成功しており、順調に進んでいる。さらに、脂肪由来幹細胞の共培養も始めており、次のステップへも開始している。
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今後の研究の推進方策 |
抗菌、感染治療効果のある幹細胞+ヨード担持チタンハイブリッドのバイオインプラントを作成し、動物実験で安全性と治療効果の証明を行い、臨床応用への橋渡しを計画する。そのため、金属表面での幹細胞の培養、スフェロイド構造体の固着プロトコールの確定、細菌接着阻害や感染抵抗性バイオフィルムの確認をし、最終的に動物実験で感染抵抗、治療効果、骨親和性、強度、安全性の確認を行う。 金属表面での幹細胞の培養、スフェロイド構造体の固着に関しては、今回作成したヨード担持チタン金属の上で、兎皮下脂肪より採取した脂肪由来幹細胞の培養を行い、Cell Counting Kitでの増殖曲線、クリスタルバイオレッド染色での形態学的観察を行う。金属内への細胞接着をみるため、ホルマリン固定した後、メタクリル酸メチルで包理し、研磨標本での組織学的評価を行い、細胞の親和性を明らかにする。更に、脂肪由来幹細胞をシプロフロキサシン含有培養液で培養して得られる抗生剤徐放性細胞でも同様にバイオインプラントを作成し、バイオインプラントの作成条件を明らかにする予定である。 その後、バイオインプラントの細菌接着阻害やバイオフィルムの確認、動物実験でバイオインプラントの感染抵抗、骨親和性、初期強度、安全性の確認をすすめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の納品が遅れたが、注文済みであり予算は全額使用した。
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