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2023 年度 実施状況報告書

悪性軟部腫瘍に対する術前化学療法感受性予測モデルの構築

研究課題

研究課題/領域番号 22K09421
研究機関福井大学

研究代表者

田中 太晶  福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 講師 (00796245)

研究分担者 松峯 昭彦  福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (00335118)
竹中 聡  地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 整形外科部長 (00588379)
出淵 雄哉  福井大学, 学術研究院医学系部門, 特別研究員 (20795041) [辞退]
渡邉 裕美子  福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 医員 (50893830)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード術前化学療法 / エクソソーム / シングルセル解析
研究実績の概要

悪性軟部腫瘍には比較的化学療法に高い感受性のものも存在するが、UPS、MFSは術前化学療法、手術後の病理診断にて化学療法奏効率が高いものから低いものまで混在し、その原因は未だ解明されていない。化学療法に用いる薬剤は主にドキソルビシンとイフォスファミドが用いられ、心毒性や腎機能障害など有害事象を引き起こす可能性が小さくない。また高悪性度肉腫の治療成績は悪く、約40%の症例は肺転移をきたし予後不良の経過をとる。したがって化学療法を行う前からその効果を予測できるモデルを構築し、再発・転移の早期診断ツールを開発することは、肉腫の治療成績の向上にとって重要である。
近年、癌患者の末梢血中の “エクソソーム”と呼ばれる細胞外小胞の存在が注目されている。癌細胞から分泌されたエクソソームにはタンパクや核酸が内包されており、周辺細胞や遠隔の臓器へと移行することでシグナルを伝達し、がんの進展にとって重要な働きをする。
我々は、マウス骨肉腫高肺転移能を有する細胞株であるLM8と、肺転移能を有さない細胞株であるDunnを用いて解析した。膜タンパクAが、LM8とDunnの両者で発現していることを確認し、エクソソーム膜にも両者で存在することを確認した。発現の差については、LM8がDunnに比べて膜タンパクAを多く発現していたものの有意差は認めなかった。またC3HマウスにLM8を皮下注し、5週間後に肺転移を確認した個体から採血を行い血液培養を行うと、浮遊・接着のどちらの環境でもLM8を培養することが可能であった。すなわち血中循環腫瘍細胞(CTC)の培養を行うことが可能であり、それらよりRNAを抽出しマイクロアレイで膜タンパクAの発現を解析すると、接着環境よりも浮遊環境におけるCTCのほうが発現が高かった。上記と同様のモデルから背部原発巣と肺転移巣、血液を採取し、シングルセル解析を行うための処理を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

我々は以前、マウス骨肉腫高肺転移株LM8とその親株であるDann骨肉腫細胞株の網羅的遺伝子発現解析を行い、LM8に高発現する分子量約64kDaの膜タンパクAを同定した。がんのOMICSデータベースであるUALCANで種々のがん腫における膜タンパクAの発現量を検索したところ、肉腫だけでなく乳がん、大腸がんなど多くのがんで発現上昇していることがわかった。さらにエクソソームのプロテオミクス解析で、LM8での膜タンパクA陽性エクソソームの発現量はDann骨肉腫細胞株よりも100倍高発現していることも確認している。以上のことから、膜タンパク陽性エクソソームは肉腫の腫瘍マーカーになり得ると考え、アッセイ系の確立を行い膜タンパクAの発現量を測定した。肉腫低悪性度、高悪性度、良性軟部腫瘍、変性疾患などで膜タンパクAの測定したものの、予後や悪性度と膜タンパクAとの相関を認めるには至らなかった。がん細胞は一細胞ごとのヘテロジェネシスがあるため、シングルセル解析を行う予定であるが、組織の準備、測定、解析に時間を有するため研究計画よりも遅れている。

今後の研究の推進方策

アッセイ系の確立:骨肉腫瘍細胞株から膜タンパクA陽性エクソソームが分泌されているので、培養上清や患者検体を用いてアッセイ系を確立する。なお、必要となるnativeな膜タンパクAを認識できる抗体は市販されていないが、膜タンパクA陽性エクソソームを補足できるマウスモノクローナル抗膜タンパクA抗体は作成済みであり、今後症例数を積み重ねて、症例の予後、悪性度、合併症などと膜タンパクAとの関連を調べていく予定である。
またまたC3HマウスにLM8を皮下注し、5週間後に肺転移を確認した個体から原発巣と肺転移巣、血液を採取し、シングルセル解析を行うための処理を行った。一細胞ごとの遺伝子の発現を解析し、原発巣から血中、転移巣を形成するまでの上皮ー間葉移行について鍵となる遺伝子の同定を目指したい。

次年度使用額が生じた理由

研究がやや遅れていることにより未使用額が生じた。当該未使用額を次年度に持ち越して追加の試薬・抗体・消耗品等購入し、遅れた部分の研究を迅速に進める。

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公開日: 2024-12-25  

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