研究課題/領域番号 |
22K09432
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
内山 勝文 北里大学, 医学部, 教授 (90286310)
|
研究分担者 |
高野 昇太郎 北里大学, 医学部, 助教 (10596505)
池田 信介 北里大学, 医学部, 助教 (90881938)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 人工関節周囲感染 / 遺伝子 / PCR / Tm mapping 法 / 16S-rRNA / 関節液 / 骨関節軟部組織感染症 / 菌数定量的検査 |
研究実績の概要 |
富山大学の仁井見らはMelting Temperature (Tm) mapping法を開発した。この検査法は、培養を行わず、検体採取から3時間程度で未知の原因菌を同定する新たな遺伝子検査であり、すでに血液培養検査に応用されている。 我々は整形外科領域感染症診断の有用性を検討するために、関節液、膿や術中細菌汚染組織検体などから直接抽出した微生物DNAを鋳型とし、複数のuniversal primer を用いてnested PCR を行い、melting 解析(HRM 解析とは異なる)で得られた複数のTm値を二次元にmapping して、その“形状”をデータベースと照らし合わせることで原因菌種の同定を行う。菌数を正確に定量するbacterial universal PCRの技術は、特にbacterial DNA contaminationの問題と、菌種毎の16S ribosomal RNA operon copy numberの多様性の問題とで、実施が困難であった。そこで真核生物である酵母をホストとした新たな耐熱性DNA polymeraseと、融解温度(Tm)値の組合せによるTm mapping 法を用いて、血液培養検査における原因菌種迅速同定と菌数測定が可能なシステムを構築することでこの問題を解決した。 本研究では、骨関節軟部組織感染症領域全般における様々な検体において、細菌培養検査で陰性を呈するが、臨床的に感染を強く疑う症例における原因菌の同定と、菌数の定量測定を行い、臨床的診断に有用なcut-off値等につき検討し、結果の信頼度の重みづけを行う。また、抗菌薬投与前後や手術前後の菌数定量値から、感染の鎮静化を確認するために必要な菌量をバイオマーカーとして判定する試みを行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
協力研究者である臨床検査技師(臨床検査部遺伝子検査)櫻井慶造 氏の退職に伴い、PCRを施行するものが不在となり、検体処理が遅れていた。現在、同敷地内にある産学連携施設の協力を得て、Tm mappingを行うための技術が確立し、2023年9月から再度検体収集と検体処理が可能となり、研究を再開している。
|
今後の研究の推進方策 |
人工関節周囲感染、脊椎インスツルメンテーション術後感染、化膿性脊椎炎、化膿性関節炎をはじめとする骨関節軟部組織感染症領域全般における採取された様々な臨床検体の残検体を用いたTm mapping法を行う。三井化学(株)と富山大学とが共同開発した下記のキットを研究用試薬として用いる。細菌迅速同定用PCR試薬キット(試験・研究用)、定量コントロールキット(試験・研究用)、E-Taq(試験・研究用)、DNA抽出キット(試験・研究用)。自動化を視野に入れ、検量用ポジテイブコントロール(三井化学)を用いたTm mapping 法菌数定量検査(における原因菌の判定である2nd PCRの評価を行う。1st定量法(Copies/assay:Version-1)の結果と2nd定量法(Colony/mL:Version-2)の結果に差異が生じていないかの検討を行い、感染の有無を判断するための2nd定量法におけるcut-off値の検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
PCR処理ができない期間があり、試薬等の購入が滞った。今年度はすでに再開したため、使用額は増加すると思われる。
|