研究課題/領域番号 |
22K09439
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大澤 崇宏 北海道大学, 大学病院, 講師 (60374443)
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研究分担者 |
伊藤 陽一 北海道大学, 大学病院, 教授 (10334236)
安部 崇重 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (10399842)
樋田 京子 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (40399952)
篠原 信雄 北海道大学, 医学研究院, 教授 (90250422)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 膀胱がん / 低侵襲 / 診断マーカー |
研究実績の概要 |
筋層非浸潤性膀胱がんの治療を受けた患者は、再発のリスクが高いため、長期間にわたる複数回の膀胱鏡検査を受ける。しかしながら、膀胱鏡検査には羞恥心や尿道痛等の負担が伴うため、これに代わる非侵襲的な膀胱がん診断方法の確立は患者にとって大きな恩恵となる。従来のバイオマーカー研究のほとんどは横断研究で行われ、初発時の診断に焦点を絞っていた。本研究では前向きに、治療前・治療後・再発時のマーカー発現に着目し、個別化された精度の高い膀胱がん診断法の開発を目的とし、同時性および異時性に多発しやすい膀胱がんの発症メカニズムについても遺伝子レベルで解明することが目的である。 対象患者は北海道大学病院、北海道がんセンター、市立札幌病院、および手稲渓仁会病院において、膀胱がんと診断された患者を対象とした。膀胱がん患者の尿検体を術前から術後サーベイランス期間にかけて前向きに回収を終えた。 現在は、同一の患者における前向きの検体を用いて、申請者がすでに同定している複数の遺伝子群の診断マーカーとしてのValidationを行っている。また、着目する遺伝子群の発現の経時変化を解析することにより、膀胱がん発症のメカニズムや再発予測マーカーとしての有用性について検証している。さらに膀胱がんの発症時の尿中発現マーカーと、再発時の尿中発現マーカーの一致/不一致を解析し、個別化された再発予測システムの確立を目指している。 尿中バイオマーカーの膀胱腫瘍組織での発現を解析:本研究で着目する尿中mRNA遺伝子の発現を、膀胱腫瘍並びに正常膀胱粘膜、および尿中細胞を用いて解析する。先行する膀胱がんと、異時性に再発した膀胱がんにおけるこれらの遺伝子発現に関連する分子の免疫組織染色を行うことで、再発や進展のメカニズムを遺伝子レベルで明らかとする。上記研究により最適化された膀胱がん診断キットの開発を目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では、前向きの検体回収を順調に収集している。また、尿中バイオマーカーによる膀胱がん診断能についてのValidationを開始することができている。膀胱がん診断時の尿サンプルを用いて、申請者らが着目している遺伝子群の組み合わせによる検査法の信頼性および妥当性を検証し始めている。また、膀胱鏡以外の臨床所見(自覚症状、検尿所見、および画像所見等)の組み合わせによる、膀胱がんの診断精度を検証している。 本研究での横断解析はすんでいる。前回の研究で明らかにしたKRT17、GPRC5A、SLC2A15の3つのマーカーに加え、文献から追加したMDK、CXCR2の2つのマーカーに着目した。これらのEV mRNAマーカーの発現は、pTaと比較し、pT1、Tis、MIBCといったより高いステージ/グレードの腫瘍を持つ患者において高発現していた。MDKとKRT17のEV mRNAの発現は、T1、併存Tis、筋層浸潤性膀胱癌患者において、 LGTaとHGTaの患者と比較して高発現しており、かつ健常者と比較しても有意に高かった。EV mRNAマーカーの診断性能をROC曲線解析で推定し、尿細胞診、顕微鏡的血尿、バイオマーカー(BTAおよびNMP22)と比較したところ、EV mRNA MDKは膀胱癌の検出において0.760という最も高いAUCを示していた。また、EV mRNA KRT17のAUCも0.730と診断精度が高かった。両EV mRNAマーカーは従来のマーカー、例えば細胞診(AUC 0.721)、NMP22(AUC 0.692)、顕微鏡的血尿(AUC 0.669)およびBTA(AUC 0.659)のAUCを上回っていた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策については以下のように準備する ①尿中バイオマーカーの術前から術後における発現の変化を解析 本研究で着目する遺伝子群の発現が、治療前後、および再発時にどのように推移するかを解析する。経時的に集められた尿検体から前述の方法でエクソソームを抽出し、mRNA発現解析を行う。着目する遺伝子群の発現の経時変化を解析することにより、膀胱がん発症のメカニズムや再発予測マーカーとしての有用性について検証する。膀胱がんの発症時の尿中発現マーカーと、再発時の尿中発現マーカーの一致/不一致を解析し、個別化された再発予測システムの確立を目指す。 ②尿中バイオマーカーの膀胱腫瘍組織での発現を解析 本研究で着目する尿中mRNA遺伝子の発現を、膀胱腫瘍並びに正常膀胱粘膜、および尿中細胞を用いて解析する。先行する膀胱がんと、異時性に再発した膀胱がんにおけるこれらの遺伝子発現に関連する分子の免疫組織染色を行うことで、再発や進展のメカニズムを遺伝子レベルで明らかとする。 ①、②と並行し、最適化された膀胱がん診断キットの開発を目標とする
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次年度使用額が生じた理由 |
ハイブリット開催の学会が多く現地へ赴いての学会・研究会が少なく次年度使用額が生じた。 今後も前向きに収集した検体の尿中エクソソームの抽出が必要である。また、各種の遺伝子異常を種々の方法(RT-PCR, real-time PCR, 免疫組織染色)で解析する必要がある。Real-time PCR試薬、尿中mRNA分析キット、抗体一式、尿中バイオマーカー測定ELISAキット等の高額の費用が発生する。また、解析結果も徐々に明らかとなりつつある。また、海外での学会発表や、論文投稿の際の費用が必要となる見込みである。
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