研究課題/領域番号 |
22K09446
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
後藤 崇之 京都大学, 医学研究科, 講師 (90806605)
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研究分担者 |
小林 恭 京都大学, 医学研究科, 教授 (00642406)
赤松 秀輔 名古屋大学, 医学研究科, 教授 (20767248)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | CDK12異常前立腺癌 / 去勢抵抗性前立腺癌 / ATM阻害薬 / PARP阻害薬 / PDX |
研究実績の概要 |
1 CDK12変異前立腺癌患者由来ゼノグラフト(PDX)を用いた投薬実験・機能解析 2名のCDK12変異前立腺癌患者から独自に樹立したPDXであるKUCaP18・KUCaP21と、コントロールとしてCDK12変異を有さない去勢抵抗性前立腺癌PDX、KUCaP12を用いて、PARP阻害薬単剤群、ATR阻害薬単剤群、併用投与群およびvehicle群の4群にわけ投薬実験を行った。その結果、KUCaP18・21では併用群でのみ有意差をもって抗腫瘍効果を認め、ウエスタンブロッティングでDNA2本鎖損傷マーカーであるγH2AXの上昇を認めた。オフターゲット効果の排除のため異なるPARP阻害薬・ATR阻害薬の併用投薬実験でもやはり抗腫瘍効果を認めた。一方KUCaP12ではどの併用群も効果を認めなかった。以上からCDK12異常のあるPDXにおいてPARP阻害薬・ATR阻害薬の併用投与の効果を認めた。また有害事象評価として治療後の肝臓・腎臓の組織学的検索および血球数検索においては投薬群とvehicle群で有意差を認めなかった。 2 細胞株を用いたPARP阻害薬とATR阻害薬の作用機序の解明 我々が作成したCDK12KO(ノックアウト)前立腺癌細胞株と親株とでATR阻害薬の投薬実験においてCDK12KO細胞株で増殖抑制を認めた。RNAポリメラーゼIIのリン酸化を介してDNA修復遺伝子の制御を行うと考えられているCDK12に対してKOを行うとpSer2 CTDの変化を伴った下流の発現変化が期待されるなか、DNA損傷下(CPT11投与下)の 前立腺癌細胞におけるCDK12KOのウエスタンブロッティングではpSer2 CTDに変化なくDNA修復遺伝子であるATMの発現が低下していた。このことからCDK12KO下においては、従来とは異なるATMの下流の制御機構を介して媒介される可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、細胞株を用いたPARP阻害薬とATR阻害薬の作用機序の解明を終えている。
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今後の研究の推進方策 |
1 細胞株を用いたPARP阻害薬とATR阻害薬の作用機序の解明(後藤/小林) DNA損傷下の PCa 細胞における CDK12KOの機能はATMの下方制御を介して媒介される可能性についてさらなる検証をする。具体的には、CDK12KO細胞における相同組み換え修復機能をDR-GFPというレポーターを導入し検討する。さらには共役分子が影響していないかについても、siRNAでノックダウンを行い検証する。 2 オルガノイドを用いた作用機序の解明 CDK12変異PDX由来オルガノイド(コントロール株)を用いてshATRオルガノイド株(shATR株)を作成し、PARP阻害薬とATR阻害薬をコントロール株に併用投与し、他方でPARP阻害薬をshATR株に単剤投与を行う。細胞株と同様にATR阻害薬の有効性を評価する。コントロール株及びshATR株をマウスに再移植(オルガノイド移植ゼノグラフト)し、PDX投薬実験の再現性が得られるか確認する。shATR株群では、PARP阻害薬単剤の投薬実験により、ATR阻害薬による腫瘍縮小がオフターゲット効果でないか検証する。
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