研究課題
本邦では人口の高齢化が進んでおり、前立腺癌の罹患数および死亡数の増加が社会的な問題となっている。科学的根拠に基づくがん予防法を確立することができれば、多くの人が健康長寿を享受できる社会作りにつながる。疫学研究から、前立腺癌の発がんと進展には遺伝的素因に加えて生活習慣が大きく関与することが明らかとなった。生活習慣の中でも、高脂肪食を特徴とする欧米型の食生活や肥満は前立腺癌の進展につながる。申請者らはPten遺伝子を前立腺特異的にノックアウトした前立腺癌発症マウス(Pb-Cre+;Ptenfl/fl)を用いて、高脂肪食摂取によりがんの増殖が促進することを明らかにしてきた。前立腺癌の増殖には免疫細胞を介する前立腺の慢性炎症、さらに腸内細菌叢由来の短鎖脂肪酸が関与する。申請者らは、生活習慣による前立腺癌の代謝物プロファイル変化を解明するため、メタボローム解析手法を樹立した。前立腺癌発症マウスモデルにおいて、腫瘍の増大を認める高脂肪食群では通常食群と比較して腫瘍内のダイナミックな代謝物プロファイルの変化が生じており、One-Carbon経路が活性化することを発見した。申請者らはさらに、疫学研究から様々な癌腫において適度な運動によるがん発症リスクの低下が見られる点に着目した。前立腺癌においても適度な運動は死亡リスクを低下させるが、そのメカニズムは未解明である。本研究において、マウスに運動による介入を行ったところ、前立腺癌の縮小を認め (27%縮小、p<0.01)、腫瘍増殖を反映するKi-67陽性率は低下した。運動により腫瘍免疫や腸内細菌叢の変化が見られた。さらに、RNA seqおよびメタボロームを統合解析したところ、運動により腫瘍内のアルギニン代謝が大きく変化することを発見した。本研究の成果は、生活習慣による代謝物プロファイル変化を介する前立腺癌の増殖制御メカニズムを明らかにした。
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