研究課題/領域番号 |
22K09449
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
渡辺 隆太 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教 (00813635)
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研究分担者 |
雑賀 隆史 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (10314676)
東山 繁樹 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 教授 (60202272)
菊川 忠彦 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (70444734)
三浦 徳宣 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (80554427)
沢田 雄一郎 独立行政法人国立病院機構四国がんセンター(臨床研究センター), その他部局等, 医師 (80793554)
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研究期間 (年度) |
2022-11-15 – 2026-03-31
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キーワード | 神経内分泌前立腺癌 / 空間的遺伝子発現解析 / シングルセル解析 |
研究実績の概要 |
申請者は約3500例に及ぶ愛媛県下前立腺全摘術の治療成績および予後因子に関する多施設データベースMICAN Studyを有している。このデータベースから高悪性度の前立腺癌である神経内分泌前立腺癌を抽出し、そのFFPE(ホルマリン固定パラフィン包埋)検体を用いて空間的遺伝子発現解析を行い、悪性化に関わるドライバー遺伝子を同定した。空間的遺伝子発現解析とは、全mRNAに基づいて組織を分類できる分子技術であり、組織に含まれる全ての発現遺伝子を同時に観察でき、組織のどこで何の遺伝子が発現していたかをスライド上で可視化できる。この手法は、不均一性を特徴とする前立腺癌組織において特に有用な手法である。Visiumを導入することで、これまで新鮮組織やマウス・細胞株でしか行えなかったシングルセル解析をアーカイブ標本で行うことができる。 ARPC・de novo NEPC併存の非常に稀な症例に対して、空間的遺伝子発現技術を導入し、de novo NEPCの特徴的な遺伝子異常を解析した。その結果、Rbfox3やSFRTM2のDownregulationや腫瘍微小環境におけるHGF, HMOX1, ELNやGREM1のUpregulationを明らかにし、報告した。本報告論文は、FFPEに対して空間的遺伝子発現解析を行った(CytAssist Visium)本邦初めての報告となり、The top view papers in IJMS 2023に選出された。 また、典型的なIDCP(Intraductal Carcinoma of the Prostate)症例の空間的遺伝子発現解析を行い、特徴的な遺伝子発現を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前立腺癌細胞株をアンドロゲン除去下で培養し、神経内分泌マーカー陽性となった株を樹立したが、細胞の増殖が極めて悪く、シングルセル解析に進めることはできていない。 一方で、空間的遺伝子発現解析の手法を用いたde novo NEPCとARPCの発現遺伝子の比較や、IDCP(Intraductal Carcinome of the Prostate)特異的遺伝子発現解析は非常に順調に進んでいる。今後シングルセル解析の手法や高解像度空間的遺伝子発現解析を導入することでより詳細な解析を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
空間的遺伝子発現解析の技術を用いて、NEPCやIDCP特異的な遺伝子異常を探索することに成功した。しかし、空間的遺伝子発現解析はドットベースの解析であり、1つのドットに複数の細胞が含まれることから、純粋なシングルセル解析とは言えず、ドット内に腫瘍細胞と腫瘍微小環境の細胞が混在しているというデメリットがあった。この点を克服するために、申請者は、複数のサンプルによるシングルセル解析と空間的遺伝子発現解析のデータの統合や、シングルセルレベルの高解像度空間的遺伝子発現解析、またNEPC/IDCPオルガノイド樹立による研究手法で、腫瘍微小環境を介したより詳細なNEPC/IDCPの病態解明を目指す。 神経内分泌前立腺癌、Intraductal Carcinoma of the Prostate(IDCP)の組織サンプルあるいは細胞株由来のサンプルを用いて、Flex Single Cell RNA seq を実行する。Flex Single Cell RNA seqは、最新のシングルセル手法で、手術検体を摘出直後に専用のプロトコールで固定しシングルセル化することで、人為的なシグナル変化を最小限にでき、全ポピュレーションが失われることなく網羅的に1細胞レベルのRNAシークエンスを行うことができる手法である。 Single Cell RNA seq dataを空間的遺伝子発現解析データと統合することで、1細胞レベルで空間的情報を有した解析ができるようになり、NEPC/IDCPの詳細なメカニズム解析が可能となる。 また、NEPC/IDCP組織からオルガノイドを樹立する。オルガノイドは薬剤抵抗性・浸潤・転移に重要な役割を果たすと言われている腫瘍微小環境の細胞を含んでいることから、シングルセル解析技術により微小環境の1細胞にも着目して解析することでNEPC/IDCPのメカニズム解明に重要なツールとなる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年1月~12月まで米国留学しており、2024年3月より科研費再開した。 4月の出張費として使用するため、次年度使用とした。
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