研究課題/領域番号 |
22K09451
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
秦 聡孝 大分大学, 医学部, 教授 (60404381)
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研究分担者 |
三股 浩光 大分大学, 医学部, 教授 (60219714)
安藤 忠助 大分大学, 医学部, 准教授 (20433047)
澁谷 忠正 大分大学, 医学部, 助教 (20601149)
羽田 真郎 大分大学, 医学部, 助教 (90773838)
篠原 麻由香 大分大学, 医学部, 助教 (30774666)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 外尿道括約筋 / セクレトーム / 外尿道括約筋衛星細胞 / 膀胱平滑筋細胞 / 線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
外尿道括約筋は膜様部尿道を取り囲む横紋筋で、尿禁制に寄与している。しかし加齢に伴い外尿道括約筋細胞は減少しており、筋細胞は脂肪細胞や線維組織に置換されて括約筋機能が低下し、これが高齢者の尿失禁の一因と考えられている。 本研究では尿失禁に対する新規再生医療の開発に向けて、ヒト外尿道括約筋幹細胞の培養上清である「セクレトーム」を用いたrational確立に向けて様々な実験を行う。 今年度は当教室で樹立した長寿化外尿括約筋細胞を用いて幹細胞から分泌されるセクレトーム解析のための上清回収・濃縮・バイオプレックスの実験を行う予定であった。しかし大学の改修工事に伴う実験の制約などによりセクレトーム解析を行う事が出来なかったため、今年度は新たな(女性の括約筋の分離を目指して)外尿道括約筋幹細胞の分離と長寿化細胞の樹立を行った。また、セクレトームが膀胱平滑筋細胞や線維芽細胞の増殖や細胞外マトリックスに与える影響を細胞培養系にて解析するために、初代培養のヒト膀胱平滑筋細胞及び線維芽細胞の分離培養を行った。 インフォームドコンセントの得られた膀胱全摘症例より、手術時に外尿道括約筋組織外尿道括約筋の微量組織を細切し、コラゲナーゼ処理後に初代培養を行った。分離培養した外尿道括約筋幹細胞にCSII-CMV-TERTを遺伝子導入した。さらに横紋筋幹細胞マーカーであるCD56(NCAM)に対する蛍光抗体を用いてフローサイトメーターによって横紋筋幹細胞を分離し長寿化細胞株を樹立した。これまでに8例の外尿道括約筋組織の初代培養を行っており、4例に長寿化遺伝子を導入して3例の長寿化細胞株を樹立した。これらの細胞株については分化・増殖実験を行い横紋筋に分化することを確認した。同時に膀胱平滑筋細胞、線維芽細胞についても初代培養を行い同様に分離を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R3年度から大学による改修工事が行われており当教室の実験室の立ち上げに時間がかかった。また共通実験施設である実験実習機器センターの一部が閉鎖となり、実施可能な実験が制限されるなど実験を行う時間等が厳しく減ったことで計画に遅れが生じた。そのため今年度は主に培養実験に専念せざるを得なかった。 しかしながら、新たな外尿道括約筋細胞株の樹立と共に膀胱平滑筋細胞の分離、線維芽細胞の分離培養は成功している。来年度に行う予定の培養上清、細胞からのセクレトーム解析、エクソソーム解析の実験は予定通り進む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き長寿化外尿道括約筋細胞の培養実験を行い、増殖・分化におけるセクレトーム解析のためのサンプル調整・濃縮・たんぱく質測定系の構築を行う。培養上清はプロテオーム解析を行い、セクレトームに含まれるタンパクやサイトカインの解析を行う。同時に細胞外小胞の多様性に着目してエクソソーム・マイクロベクシルの解析も行い細胞外小胞のタンパクの同定を行う。 さらに初代培養で分離した膀胱平滑筋細胞及び線維芽細胞との共培養や、外尿道括約筋細胞の上清添加の実験を行いそれぞれの細胞の増殖・生存・細胞形態の変化(特に分化能や分化様式)などを検討する。プロテオーム解析やエクソソーム解析については受託サービスに託して実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
R3年度から大学による改修工事に伴い、当講座の実験室の立ち上げ時期の遅延及び共通の実験実習機器センターの機器部門が一部閉鎖となった。そのため実施可能な実験が制限されるなど実験を行う時間等が厳しく減ったことにより計画に遅れが生じた。これらにより繰越予算が生じた。 来年度より実験実習機器センターも正常化することからプロテオーム解析のための試薬購入や解析実験の費用に充てる予定である。
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