研究課題/領域番号 |
22K09458
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
武田 利和 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10383829)
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研究分担者 |
安水 洋太 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (40464854)
松本 一宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80366153)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 原発性アルドステロン症 / 機能温存手術 |
研究実績の概要 |
脳出血や心疾患など生命を脅かす合併症を引き起こす原発性アルドステロン症の中でも、副腎に発生するアルドステロン産生腺腫(APA)は外科的治療で治癒が期待できる。標準術式は片側副腎全摘術であるが、申請者は正常副腎を温存する腹腔鏡下副腎部分切除術を行い良好な成績を挙げている。しかし、アルドステロンを産生しない非機能性腺腫や画像診断が不可能なアルドステロン産生細胞クラスターの存在が部分切除術の成績に大きな影響を与える。本研究の目的は腹腔鏡下副腎部分切除術で治癒可能なAPA治癒予測モデルを構築し、3Dモデルを用いた術前シミュレーションによるAPAに対する超低侵襲治療戦略の確立である。 片側APA患者のCT画像を、3次元画像解析システム、SYNAPSE VINSENT(富士フィルムメディカル株式会社)を用い3D画像処理を行い、得られたSTLデータを外部に委託し、3Dプリンターを用いて3Dモデルを作成した。3Dモデルを作成する際、CT画像からAPAや正常副腎だけでなく、術中メルクマールとなる血管の抽出も行った。水分の割合を調整することにより、臓器に合わせた形状、硬度に自由に加工可能なポリビニルアルコールを用い実際の臓器と同じようにシーリングデバイスや電気メスが使用可能な3Dモデルの作成に成功した。3Dモデルを用いてシミュレーションを行い、最適な腫瘍切除ラインを決定した。腹腔鏡下副腎部分切除術高難易度症例予測解析を行い、高難易度症例のリスク因子を見出した。特に高難易度症例と予測された症例に対して3Dモデルの有用性が示唆された。摘出腫瘍のアルドステロン合成酵素(CYP11B2)免疫染色を行うと術前に部分切除術の適応と判断し、部分切除術を施行した症例のAPA周囲にAPCCを認める症例が散見され、部分切除術候補者の中にもAPA周囲にAPCCを伴う症例が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高難易度症例予測解析により、高難易度症例と予測された症例に対する3Dモデルの有用性が示唆された。部分切除術適応症例のAPA周囲にAPCCを有する症例が確認され、病態の複雑性も加味し治癒予測モデルの構築を目指すべきであると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
腹腔鏡下副腎部分切除術で治癒可能なAPA治癒予測モデルを構築し、3Dモデルを用いた術前シミュレーションによるAPAに対する超低侵襲治療戦略の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
アルドステロン産生腺腫に対する手術が予定していた数より少なかったことと、予定していた試薬の購入を次年度に行うこととしたため。今年度はポリビニルアルコールの水分量を調整し、実際の副腎の硬度と類似した3Dモデルの開発に成功した。次年度は多くの症例データを用い、治癒予測モデル作成のための副腎静脈サンプリングデータ解析、免疫組織学的、分子病理学的解析を総合した検討も並行して行い、助成金を使用する予定である。
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