研究実績の概要 |
腎がん手術検体のmitochondrial TMB(mtTMB)を算出し、臨床的予後および薬物治療効果との関連を検証するために、手術によって摘出された腎がん組織と付随する正常腎組織からのDNAおよびRNA抽出作業を行った。令和4年度に168症例の抽出が完了し、抽出したDNAを用いてミトコンドリアゲノム(mtDNA)解析を進めた。がん組織のmtDNA全配列と対応する正常腎組織から抽出したmtDNAの全配列とを比較し、体細胞変異の決定を行った。1症例あたり最大で31の体細胞変異を認めた。 Dloop regionを含むミトコンドリアゲノム全体でのmtTMB(体細胞変異数/sample)の中央値は5(最大値31、最小値0)、Exonic regionのmtTMBの中央値は2(最大値20、最小値0)、Dloop regionのmtTMBの中央値は2(最大値12、最小値0)であった。Dloop regionでより多くの変異が認められると予想されたが、exonic regionの様々な遺伝子に散在して体細胞変異を認める症例が少なからずあった。病理学的予後因子別のmtTMB中央値 (IQR)は、組織型別では、淡明細胞型腎癌: 5 (3-6)、乳頭状腎細胞癌: 5.5 (4-8)、嫌色素性腎細胞癌: 3 (3-12.5)、pTカテゴリー別では、pT1: 5 (4-6), pT2: 3.5 (3-4.75), pT3: 4 (4-7), pT4: 0、Fuhrman分類別では、G1: 4(4-5), G2: 5 (3-6), G3: 5.5 (3-7), G4: 4 (2-8.5)であった。 遺伝子サイトでは、2487に変異を有する症例が最多で28例であった。 今後は、mtTMBと実臨床で施行された治療および臨床経過との関連を解析する。
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