研究課題/領域番号 |
22K09469
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
植村 俊彦 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (60905941)
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研究分担者 |
野々村 祝夫 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30263263)
河嶋 厚成 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (50746568)
神宮司 健太郎 大阪大学, 大学院薬学研究科, 特任講師(常勤) (80707571)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 腎細胞癌 / 細胞外小胞 / 細菌遺伝情報 |
研究実績の概要 |
近年、血液を含め無菌と考えられていた領域にも細菌遺伝情報が存在していることが明らかになった。我々は血清細胞外小胞に含まれる細菌DNAが、腎細胞癌の診断に有用なバイオマーカーとなり得ることを報告した。腎癌患者の血清細胞外小胞には健常者と比較して、3つの細菌DNA(Bacteroidia, TM7-1, Sphingomonadales)が高発現していた。 また、腫瘍組織中のPD-1発現制御性T細胞は免疫チェックポイント阻害薬治療の有効性に影響を与えることが周知されている。我々は先行研究において、腎細胞癌組織に浸潤するCD4陽性T細胞をPD-1およびTIM-3の発現強度に応じて5つのグループ(Fr. I、II、III、IV、およびV)に分類可能であり、PD-1低発現かつTIM-3高発現CD4陽性T細胞集団(Fr. V)が制御性T細胞分画として特徴付けられることを報告した。 本研究において、CD4陽性T細胞全体に対するFr. Vが占める割合と、血清細胞外小胞中のBacteroidia DNA発現量の間に正の相関を示すことが明らかとなった。さらに免疫チェックポイント阻害薬治療を受けた腎細胞癌患者において、血清細胞外小胞中のBacteroidia DNA発現の高い群は低い群に対して有意に予後不良であった。これらの結果から、血清細胞外小胞中のBacteroidia DNAは腎細胞癌組織中の制御性T細胞と相関していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究結果から、血清細胞外小胞に含まれるBacteroidia DNA発現量は腎細胞癌組織内の免疫状態に関与している可能性が示唆された。本研究の限界として、16S rRNAメタゲノム解析では細菌種(Species)レベルの同定が困難であることがあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
脂肪組織と細菌叢はともにヒト生体内の代謝に関与していることが周知されている。追加解析として、腎癌患者における腎周囲脂肪組織の炎症を反映する血清細胞外小胞中細菌DNAの同定を行う方針とした。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行金額が異なったためである。
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