研究課題/領域番号 |
22K09487
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
中澤 龍斗 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (10465403)
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研究分担者 |
菊地 栄次 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (10286552)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 尿路感染症 / エクソソーム / 鑑別診断法 / miRNA |
研究実績の概要 |
尿路感染症は泌尿器科領域において最も頻度の高い炎症性疾患である。従来、尿路感染症は身体所見、症状および尿中白血球を確認することで診断されるが、臨床症状は多岐にわたり、尿中白血球は尿路感染症に特異的ではないため、診断に苦慮することが少なくない。そのため、真の尿路感染症を鑑別できる感度と特異度の高い診断法の開発が切望されている。そこで本研究では、尿路感染症の確実で迅速な診断法として、尿路感染に伴って特異的に出現する尿中エクソソーム (UTI exosome)の表面マーカーを指標とする検査法を確立するとともに、感染部位別のUTI exosomeを検出することにより尿路感染症の鑑別診断を試みることを目的として研究を開始した。 本年度はまず、初診外来で感染症が疑われた患者について感染初期の尿検体を採取できるように、腎臓内科と協力した研究体制の構築を行った。しかし、コロナ渦であったことや、病院のカルテシステムの変更などの理由により、外来業務に尿検体の採取を組み込むことが非常に困難であったため、新しい検体の採取はできなかった。 そこで、以前より収集していた尿検体(UTI患者17例と健常者30例)からエクソソームを抽出し、qPCRにて感染症との関連が示唆されているmiR146a-5pの定量を行った。miR146a-5p発現量はUTIにおいて著しく高く (p<0.0001 )、健常者との差は7.5倍以上であった。現在、同検体についてExoScreen法によるCD9陽性エクソソームの測定を行い、結果を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新たな尿路感染症患者の検体を採取できなかったため。 次年度も他科の外来で検体を取得することは困難と考えられるため、今後は腎泌尿器外科外来で尿路感染症加療中の患者尿検体を採取することとする。鑑別診断のための感染初期検体の採取は2024年ごろの収集を目指す。 miR146a-5p発現量の定量やUTI exosome検出系についての基礎検討など、一定の成果は得られた。
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今後の研究の推進方策 |
1) 尿路感染症患者のUTI exosomeの表面マーカーの同定:同定した複数の表面マーカーを組み合わせ、ExoScreen法を用いたUTI exosome検出系を確立する。 2) 尿路感染症患者の尿中エクソソームの解析と鑑別診断の試み:UTI exosomeの定量結果と臨床データ(尿中白血球、尿培養、臨床症状など)を比較し、尿路感染の有無や重症度を判定する方法としての有用性を検証する。さらにUTI exosomeの表面マーカーの違いから、尿路感染の鑑別診断(膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎、精巣上体炎)を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
エクソソームに含まれるタンパクのプロテオーム解析を本年度に行う予定であったが、検体採取ができずに後ろ倒しになったため、次年度以降にこの解析のための予算として使用する。
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