研究実績の概要 |
我々は、従来の次世代シークエンサー(NGS)によるshort-read sequenceでは見逃されている大きな構造多型(Structural variant, SV)などのゲノム異常を新たに検出することで、治療標的の探索が可能になるという仮説のもと、ナノポアシークエンサーによるlong-read解析によってmRCCの薬物治療感受性や予後と相関するマーカーや治療標的としてのネオアンチゲンの同定を行うことを目的として研究を行った。 1.5種のヒトRCC細胞株786O, 769P, ACHN, A498, Caki-1を対象に、GridIONを用いたlong-read解析を施行し、データの信頼性を確認するための準備として、RCC株を対象としてPacBio sequenceを用いた解析との比較検討を行い、データの互換性を検証した。この実験系では、第17番染色体上のBRCA1遺伝子の広範囲な遺伝子欠損を伴うSVを同定した。 2.RCC細胞株を用いたNGSによるshort-read解析を行ったところ、BRCA1遺伝子の欠失を示唆する所見は得られていない。 3.さらに、RCC患者の手術検体を用いて同様の検討を行ったところ、chromophobe RCCでBRCA1のSVの頻度が高い傾向があることを見いだした。現在、この知見の確実性を検証中である。 4.Long-read解析の手法に安定性と確実性があることが示されたので、RCC組織を材料に同解析を行うことでデータの蓄積を行い、さまざまな薬剤(TKIやIO)に対する感受性との相関を検討中である。研究責任者の大学退職に伴い、本科研費を用いた研究継続は困難であると判断し、本科研費は廃止するが、共同研究者の中で新たな科研費申請を行って同内容の研究を継続していく予定である。
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