研究課題
今年度は、エクソソームmiR-1の機能と、エクソソームがRCCにおける腫瘍メーカーを構成する可能性について検討した。まず、スピンカラムを用いた方法により、細胞溶解液とヒト血清からエクソソームを回収する方法を確立した。次に、Nanosightのナノ粒子追跡解析とエクソソームマーカーCD63を用いたウェスタンブロット解析により、エクソソームを評価した。その結果、PKH26で標識したエクソソームがレシピエント細胞と融合することを確認した。さらに、miR-1を導入した細胞由来のエクソソームで処理したRCC細胞では、miR-1の発現が上昇した。機能解析の結果、エクソソームmiR-1はコントロールと比較して、細胞の増殖、移動、浸潤を有意に抑制することが示された。また、RCCに関するTCGAデータベースを用いた解析では、臨床RCCサンプルでは正常腎臓サンプルと比較してmiR-1発現が有意に低下しており、miR-1発現が低い患者は高い患者と比較して全生存期間が短いことが示された。さらにRNAシーケンス解析により、エクソソームmiR-1への曝露により、いくつかの遺伝子の発現レベルが変化することが示された。TCGAデータベースを用いた解析では、RCCにおいてMYO15Aの高発現群ではより悪い転帰と関連することが示された。また臨床患者の血清から採取したエクソソームのRT-qPCR解析により、MYO15Aは健常対照と比較してRCC患者で有意に発現が上昇することが示された。この研究により、エクソソームmiR-1による治療がRCCの治療に有効なアプローチとなる可能性が示された。また、エクソソームMYO15AはRCCの診断用腫瘍マーカーとなる可能性も示唆された。
2: おおむね順調に進展している
予定通りに実験を行い、論文化している。
さらに、他のエクソソーム関連マイクロRNAについて研究を進める予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 630 ページ: 71-76
10.1016/j.bbrc.2022.09.056.