研究実績の概要 |
急性腎不全に伴う腎実質の虚血・低酸素状態は、糸球体および尿細管間質の不可逆的な組織学的な変化をもたらす。我々はこれまで腎組織への好中球浸潤が酸化ストレスを介して組織障害の主要な役割を果たすことを明らかにし、さらなる好中球動態を解明するべく、生体マウス腎での好中球 in vivo リアルタイムイメージングを確立した。
好中球は血管内皮細胞との相互作用を介して炎症局所へ浸潤する。その一連の過程には、好中球の捕捉・ローリング・接着・遊出があり、各段階においてセレクチンファミリーや、インテグリン、ICAM-1, VCAM-1などの接着因子により制御される。好中球浸潤により産生された活性酸素種は、強力な炎症を惹起し血管内皮機能維持に重要なNOが欠乏する。本申請研究では好中球浸潤を制御するために最適な酸化ストレス処理機構および接着分子阻害法を我々の革新的イメージング法を用いて解析し、新規腎障害治療薬としての基盤確立と革新的創薬への展開を目指す。
昨年度までに、血管内皮障害モデルマウス(eNOS-KO)を用いたリアルタイムイメージングを行い、血管内皮障害を有する場合の好中球浸潤の増悪のさらなる解析および、ICAM-1, VCAM-1の発現差異の検討を行った。本年度は、糖尿病モデルマウス(Akitaマウス)においてもリアルタイムイメージングを行うと共に、腎機能および組織切片を用いたHE染色・PAS染色・免疫染色(KIM-1)による評価を加えた。今後は、E-selectinを始めとするセレクチンファミリーの阻害・ICAM-1の阻害による腎組織障害の軽減をinvivo, in vitroにおいて検討を行う。
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