研究課題
熱ショック蛋白質(Heat shock protein: HSP)とは、新生蛋白質の成熟・安定化、変性蛋白質の修復・分解などを司る分子シャペロンである。特にHSP90は、多くの癌原蛋白質の安定化・機能発現に必須であるため、HSP90阻害剤がこれまで癌治療ターゲットとして注目されてきた。一方、HSPを介した蛋白分解は癌治療の観点では利用されてこなかったが、今回我々は、HSP90結合部位と標的蛋白質結合部位をリンカーで結合した薬剤により、HSP90を介したユビキチン化および蛋白分解を促進する、HSP90調節性標的蛋白質分解誘導(Chaperone-mediated protein degradation: CHAMP)の薬剤基盤を開発した。本研究計画では、去勢抵抗性前立腺癌を対象として、エピジェネティックな癌治療ターゲットとして注目されるブロモドメイン蛋白質BRD4の分解誘導剤(CHAMP-BRD4)を用い、その治療効果を検討する。本年度は、前立腺癌細胞株を用いて、CHAMP-BRD4によるBRD4蛋白分解効果(Western blot)や、前立腺癌細胞株に対する抗腫瘍効果(in vitro)を検討した。また、HSP90阻害剤の抗腫瘍効果がすでに知られている、膀胱癌、腎癌細胞株にも対象を広げて同様の検討を行い、HSP90阻害剤単剤およびCHAMP-BRD4による抗腫瘍効果を検討した。また、本薬剤の臨床応用を念頭に、膀胱癌臨床検体を用いて次世代シークエンスによりHSP90の変異状況を評価した。さらに本薬剤の治療抵抗性に関わる物質としてATP-binding cassette (ABC)トランスポーターの発現に注目し、前立腺癌や膀胱癌の臨床検体を用いて免疫染色法によりABCトランスポーター発現を解析した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、前立腺癌細胞株を用いて、CHAMP-BRD4によるBRD4蛋白分解効果(Western blot)や、前立腺癌細胞株に対する抗腫瘍効果(in vitro)を検討した。また、HSP90阻害剤の抗腫瘍効果がすでに知られている、膀胱癌、腎癌細胞株にも対象を広げて同様の検討を行い、HSP90阻害剤単剤およびCHAMP-BRD4による抗腫瘍効果を検討した。また、本薬剤の臨床応用を念頭に、膀胱癌臨床検体を用いて次世代シークエンスによりHSP90の変異状況を評価した。さらに本薬剤の治療抵抗性に関わる物質としてATP-binding cassette (ABC)トランスポーターの発現に注目し、前立腺癌や膀胱癌の臨床検体を用いて免疫染色法によりABCトランスポーター発現を解析した。
引き続き、CHAMP-BRD4の前立腺癌、腎癌、膀胱癌細胞株に対する抗腫瘍効果を検討する。さらに、初年度の研究成果よりCHAMP-BRD4が熱ショック反応を惹起し、抗腫瘍効果を損ないうる可能性が示唆されているため、熱ショック反応を押さえるHSF1阻害剤との併用による抗腫瘍を詳細に評価する。平行して実施中である、前立腺癌、腎癌、膀胱癌の臨床検体を用いたHSP90転移状況の評価およびABCトランスポーター発現状況の評価についても個別に論文化する方針である。
本年度は概ね順調に計画を遂行したが、予定していた動物実験を開始しなかったため、次年度使用額が発生した。次年度に予定通り施行する方針である。
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