研究課題/領域番号 |
22K09536
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
箱崎 恭平 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 訪問研究員 (70813426)
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研究分担者 |
大家 基嗣 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (00213885)
田中 伸之 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60445244)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | AXL / GAS6 / 尿路上皮癌 / 腫瘍免疫微小環境 / がん免疫ゲノミクス解析 / カボザンチニブ |
研究実績の概要 |
AXLは新規マルチキナーゼ阻害剤Cabozantinibの標的分子でもある。Cabozantinibは現在泌尿器科癌においては腎細胞癌で臨床における中心的薬剤となっているが、転移性尿路上皮がん治療においても、今後Cabozantinibが重要な位置づけとなることが予想される。 当教室で保有する尿路上皮がんの未染病理プレパラート尿路上皮がんにおいては、我々の先行研究で、ヒト膀胱癌細胞T24、HT1376、J82、5637、UMUC3についてWestern blotting法を用いてAXL発現の有無を確認し、HT1376株についてはAXLの発現が極めて弱く、他の4種の細胞株については発現が強いという結果を得ている。また、AXL発現と予後に関しては、浸潤性腎盂尿管癌60例でパイロットスタディーを行い、Kaplan-Meier法を用いた疾患特異的生存率解析で、AXL強発現が癌死と相関していることを報告した(Hattori S, et al, Ann Surg Oncol, 2016)。 すでに腎細胞癌では、AXL/GAS6それぞれの発現強弱によるAXL/GAS6 scoreという新しいスコアリングシステムを提唱し、腎細胞癌において有用なバイオマーカーになりうる可能性を示している(Hakozaki K, et al. Br J Cancer, 2021)が、尿路上皮がんにおいてもAXL/GAS6 scoreを用いた解析を行うことで独自性の高く、研究成果の臓器横断的な検証が実現できると考えている。 我々は、これまでに当教室の世界的な尿路上皮癌データベースを利用し、既に多数の病理検体を効率的かつ迅速に多重染色できるヒト膀胱癌組織マイクロアレイを作成している。加えて、当教室で保有する尿路上皮がんの未染病理プレパラートを用い、免疫染色を用いてAXLおよびGAS6発現解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍における試薬の確保困難や研究機器の確保が予定よりも困難であったことがその一因と考える。
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今後の研究の推進方策 |
AXL/GAS6の免疫染色およびバーチャルスライドスキャナによる自動化されたシングルセルカウントの手法はすでに確立させており、尿路上皮がん患者でのハイスループット解析は容易であり、尿路上皮がんにおけるAXL/GAS6発現~AXL/GAS6 scoreと予後、さらには化学療法やPembrolizmab投与の効果などを解析する。 また、東京大学医学部附属病院免疫細胞治療学講座との研究協力で、腫瘍免疫サイクルに重要な自然/獲得免疫関連分子並びに腫瘍間質因子のパネル解析である腫瘍免疫学的分類を独自にすでに作成しており、対応する免疫組織染色に用いる抗体の特異性は全て、泌尿器科病理医により妥当性が検証済みである。これらの強みを活かし、AXL/GAS6 score~腫瘍免疫微小環境との関係性を明らかにし、尿路上皮がんにおけるCabozantinibの適正使用や最適な免疫チェックポイント阻害薬との併用を促す研究成果を社会に還元したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた抗体購入などができなかったこと、当初予定を考えていた国際学会への参加がコロナ禍のため中止したことなどから次年度使用額が生じた。この分は追加実験にかかる費用、可能となれば学会参加費等に充てたいと考えている。
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