研究課題/領域番号 |
22K09546
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研究機関 | 滋賀県立総合病院(臨床研究センター) |
研究代表者 |
川村 洋介 滋賀県立総合病院(臨床研究センター), その他部局等, 医長 (50907889)
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研究分担者 |
最上 晴太 京都大学, 医学研究科, 講師 (40378766)
千草 義継 京都大学, 医学研究科, 助教 (80779158)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マクロファージ / 前期破水 / 羊膜 |
研究実績の概要 |
胎仔のCX3CR1陽性マクロファージを欠損するコンディショナルノックアウトマウスを作製し、破水実験を行ったところ、破水24時間後の破水部のサイズは対照群に比べて有意に大きく、羊膜の治癒が悪化していた。そして破水部ではCX3CR1陽性マクロファージ、vimentin、phospho-Smad3陽性となる羊膜上皮細胞は減少していた。また卵膜でのTgfb1のmRNA発現は減少していた。以上より胎仔のCX3CR1陽性マクロファージが羊膜の治癒を促進し、そのメカニズムとしてTGF-β1-Smadを介したEMTの関与が示唆された。 マクロファージと羊膜上皮細胞の相互作用を解析するためin vitroで実験を行った。スクラッチアッセイではマクロファージとの共培養により羊膜上皮細胞の遊走が促進された。スクラッチ断端ではvimentin陽性細胞が増加しており、EMTを示唆する所見であった。 次にTGF-β1を羊膜上皮細胞へ添加すると羊膜上皮細胞の遊走は亢進し、vimentin陽性細胞が増加した。そしてマクロファージとの共培養による羊膜上皮細胞の遊走促進はTGF-β1インヒビターにより阻害された。さらに妊娠マウスにTGF-β1インヒビターを投与することでも羊膜の治癒は阻害された。以上より胎児マクロファージから分泌されたTGF-β1-Smadシグナルにより羊膜上皮細胞のEMT・遊走が亢進し、羊膜の治癒が促進されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト卵膜の免疫染色により、羊膜の治癒機構としてTGF-β1-Smadを介したEMTの関与が示唆された。またin vivoにおいても妊娠マウスにTGF-β1インヒビターを投与することで羊膜の治癒は阻害され、同pathwayの関与が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
破水部の羊膜にマクロファージを遊走させる因子として、羊膜からDamage-associated molecular patterns (DAMPs)が放出されている可能性が考えられる。申請者は、これまでヒトマクロファージと羊膜上皮細胞をcell culture insertを用いて共培養するとマクロファージからのTGF-β1の分泌が上昇することを確認しており、羊膜上皮細胞からの何らかの液性因子がマクロファージを刺激していると考えられる。メディウム中の液性因子についてDAMPsを含めて検討・同定し、マウス破水モデルやヒト前期破水でも免疫染色などを利用して同液性因子の関与を確認する。
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