研究課題
我々は昨年度までに妊娠に伴うサイトメガロウイルス(CMV)再活性化の動物(マウス)モデルを作成し、そのマウスモデルを使用して抗生物質投与により腸内細菌叢を変化させたマウスではウイルス再活性化が抑制されることを見出した。この内容の論文化にあたって査読者より、幾らかの指摘を受けたため、本年度はマウスモデルに関して基礎的な試験を主におこなった。まず最初にCMV接種後4週間では潜伏感染が成立していない可能性があるとの指摘から、CMVが急性感染から潜伏感染へ移行する時間の検討からおこなった。マウスにCMVを接種し、接種後4週間と20週間で各臓器におけるCMV動態を比較した。CMVを30000PFU /マウス接種した場合には、接種後4週においても尿中や唾液腺などからCMVが検出され、高濃度でウイルスを接種した場合には4週では潜伏感染への移行は不十分であった。これに対し3000 PFU /マウスのCMV接種では4週間で潜伏感染に移行することを明らかにした。また300 PFU /マウスのCMV接種では、潜伏感染に移行したものの妊娠時におけるウイルスの再活性化が不安定であり、動物モデルとしては不十分なものであった。併せてこの時、ウイルスの再活性化は妊娠2から3週以降に起こることも明らかにした。これまで腸内細菌がCMVの再活性化に関与していることを明らかにしてきたが、腸内細菌の代謝産物である酪酸がウイルスの増殖促進に関与していることも明らかにした。この時、酪酸がウイルス感染細胞においてエクソソームの産生誘導をすることも示された。現在、産生誘導されたエクソソームがウイルスの増殖促進に関与しているか否かを検討している。加えてCMVの再活性化にエストロゲンが関与していることも明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本年度はマウスモデルの基礎的なデータ収集を主に行なったが、腸内細菌由来の代謝産物である酪酸がウイルス増殖に関与していること、さらにCMV感染細胞からエクソソームを産生誘導することが明らかとなり、エクソソームの解析に着手し始めることが出来たことから、概ね順調に進んでいると考えている。
腸内細菌由来の代謝産物である酪酸がウイルス増殖に関与していること、さらにCMV感染細胞からエクソソームを産生誘導することが明らかとなったことから、産生誘導されたエクソソームがCMV増殖促進に関与しているか否かを評価する。具体的には産生誘導されたエクソソームを精製・抽出し、CMV感染細胞を刺激することによってウイルス増殖に関与しているか否かを調べる。また同時にCMV潜伏感染細胞を刺激することによってCMV再活性化への関与も調べる。関与が明らかとなった場合にはエクソソーム内の物質の同定を行う。さらにエストロゲンの関与についても引き続き解析を行う予定である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
Microbiology Spectrum
巻: 11 ページ: e0234123
10.1128/spectrum.02341-23
Scientific Reports
巻: 13 ページ: 1867
10.1038/s41598-023-29161-3
Diabetes, Metabolic Syndrome and Obesity
巻: Volume 16 ページ: 2855~2864
10.2147/DMSO.S428190