研究課題/領域番号 |
22K09559
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
桑原 慶充 日本医科大学, 医学部, 准教授 (40373013)
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研究分担者 |
片山 映 日本医科大学, 医学部, 助教 (10333113)
杉田 洋佑 日本医科大学, 医学部, 助教 (60774354)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 慢性子宮内膜炎 / 脱落膜化 / プロゲステロン |
研究実績の概要 |
本研究は、ヒトおよび動物モデルより採取した子宮内膜検体を用いて、慢性子宮内膜炎に特異的な分子変化をゲノムワイドに捉え、着床不全病態を反映する新たな診断マーカーや治療開発に向けた分子基盤を確立することを目的としている。初年度は、ヒト検体採取と動物モデルの確立を行った。
施設倫理委員会の承認を得て、生殖補助医療において反復着床不全患者を対象に実施した子宮内膜生検の余剰検体を用いて、①CD138 免疫染色による慢性子宮内膜炎の診断、②mRNAを抽出しcDNAライブラリーの作成、③質量分析法による分子発現解析にむけた検体の凍結保存を行い、症例の集積を継続している。予備実験として、②の検体の一部を使用し、プロゲステロン受容体シグナルおよび胚接着関連分子の発現をリアルタイムPCR法で確認し、③の検体の一部を使用し、質量分析を行った。
併行して慢性子宮内膜炎の病態メカニズムを検証する目的で、マウスモデル作成を行った。マウスを麻酔下に開腹し、両側子宮角に針を刺入し、 生理食塩水またはLPS(10μg/100μL)を注入したのちに閉腹し、術後1日目、3日目、5日目、7日目に子宮を摘出した。ホルマリン固定による組織切片にCD138 免疫染色を実施し、LPSの投与により子宮内膜間質の形質細胞が術後7日目に最も顕著に増加し、ヒト慢性子宮内膜炎と類似した病理像が誘導されることを確認した。交配による脱落化関連マーカーの発現レベルと妊娠転帰についての検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト臨床検体の収集状況は順調であり、患者背景とリンクしたデータベースの作成が進んでいる。さらに、予備実験を通じて生化学的・分子生物学的解析への有用性を確認している。また、マウスの慢性子宮内膜炎モデルを確立したことで、包括的な病態メカニズムの解析が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト臨床検体の収集を継続し、今後明らかにする特異的分子機構と臨床背景との相関の検証に備える。慢性子宮内膜炎のマウスモデルの生殖における表現型を明らかにするとともに、背景となる病態メカニズムの解明に向けて、RNAシーケンスを起点としたゲノムワイドな解析に展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は臨床検体の採取、動物モデルの作成を行った。相応のコストが見込まれる研究の核となるゲノムワイドな解析は次年度に行う方針として予算を繰り越した。
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