研究実績の概要 |
CIN(cervical intraepithelial neoplasia)におけるHLAのLOH (loss of heterozygosity)の重要性の検証を目的とした。 収集したCIN検体138例を解析対象とし、病理診断を行いCINのグレードにより2群(子宮頸管炎・CIN1群、CIN2・CIN3群)に分けた。またPGMY-CHUV法によりHPV (human papillomavirus) typingを施行した。千葉県がんセンターと共同研究で、HLA-A, B, CのロングリードシーケンスをもとにCINのグレードとHLA-A, B, CのLOHの関連を検討した。結果:子宮頸管炎・CIN1群が69例、CIN2・CIN3群が69例であった。HPV typingの結果、ハイリスクHPVであるHPV16,18,52,58の分布は両群に有意差を認めなかった。HLAのLOHの検証では、子宮頸管炎・CINではHPVの抗原提示能が高い対立遺伝子ほどより頻繁に失われていた。またHLAのLOHはより進行した病状の症例ほど頻繁に認められた。HLAの抗原提示能を喪失することによりHPV(human papillomavirus)が免疫監視メカニズムを回避し、長期的な感染を引き起こすことが示唆された。またHLAのLOHを有する症例は病変の進展リスクを有することが示唆された。今後、HLAのLOHがCIN進行や持続の予後予測となりうるかの検証や、HLA-A, B, CのHPV蛋白に対する親和性を検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
HLAのLOHがCIN進行や持続の予後予測となりうるかの検証や、HLA-A, B, CのHPV (human papillomavirus)蛋白に対する親和性を検討していく予定である。各症例において、可能性のあるすべてのHPVペプチドに対するHLA class I分子の親和性をnetMHCpan (Ver. 4.1)を用いて予測する。 また、子宮頸癌や子宮頸部異形成症例を用いて、HLA-Iの免疫染色を実施する。子宮頸癌においてHLA-Iの発現消失が起こっている頻度を確認する。また、HLA-Iの発現はHLA-IのLOHのみならず、HLA関連遺伝子の変異やHLA領域のメチル化により調整されている。HLA-I発現とその調整機構を明らかにする。
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