研究課題/領域番号 |
22K09575
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
後藤 志信 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (90591909)
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研究分担者 |
尾崎 康彦 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (50254280)
安河内 友世 (川久保友世) 九州大学, 歯学研究院, 准教授 (70507813)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 不育症 / インスリン抵抗性 / 脱落膜 / PROK1 / 習慣流産 / IGFBP-1 |
研究実績の概要 |
妊娠はするが流死産を繰り返す不育症の発症頻度は妊娠女性の約5%と決して稀ではなく、近年の少子高齢化の中で社会的関心も高い。不育症の原因は様々であるが、約25%は胎児染色体が正常を示す原因不明であり、未だ確立された治療法がない。原因不明不育症患者の約3割はインスリン抵抗性高値を示すが、生理活性物質であるインスリンが流産を引き起こす詳細なメカニズムは未だわかっていない。子宮内膜に存在し着床などの妊娠成立・維持に重要な役割を果たしているProkineticine1(PROK1)及びPROK1はインスリンにより発現が増強し過剰なPROK1は絨毛細胞の遊走や浸潤を抑制することが報告されている物質である。本研究ではインスリン抵抗性高値を示す原因不明不育症患者におけるPROK1の役割について検討した。 臨床検体におけるインスリン-PROK1経路を介した免疫学的・生化学的検討を行った。2回以上の流産既往があり、本学産婦人科外来において系統的な不育症スクリーニング検査を実施し原因不明と判断された患者を対象とし、空腹時血糖値・インスリン値を用いてインスリン抵抗性や分泌能の指標となるHOMA-RやHOMA-β等を計算し患者を抽出した。インスリン抵抗性の有無及び流産時の胎児染色体異常の有無により3群に分けて後方視的に検討した。妊娠初期の頸管粘液を用いた検討ではPROK1の発現が少ないと考えられ定量比較ができなかったが、流産手術時の脱落膜組織で免疫組織染色法、蛍光多重染色法で脱落膜組織中の間質細胞にPROK1とIGFBP-1の共局在を確認し、ELISA法で定量比較を行ったところ、インスリン抵抗性高値の患者で脱落膜化障害が起こっている可能性及び相対的にPROK1が過剰発現している可能性が示唆される結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インスリンは子宮内膜や脱落膜に作用し、様々な免疫学的・生化学的反応を引き起こすことが知られている。原因不明不育症患者におけるインスリン抵抗性の存在により体内に過剰分泌されたインスリンがサイトカインやプロテアーゼの異常反応による脱落膜化障害と絨毛浸潤抑制引き起こし流産に至る、という仮説が考えられる。臨床検体を用いた検討ではインスリン分泌が亢進している患者で流産脱落膜組織のIGFBP-1及びPRLが低下しており脱落膜化障害が起こっていることを確認できたが、その詳細なメカニズムについてin vitroの実験系の検証がまた不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroでのインスリンによる脱落膜化不全、絨毛浸潤不全メカニズムの解明を予定している。子宮内膜間質細胞を用いた脱落膜化モデルを用い、インスリン及びインスリン及びインスリン-細胞内シグナル伝達経路に重要な役割を果たすphosphatidylinositol 3-kinase(PI-3K)阻害剤を培養上清に添加し、各種プロテアーゼやサイトカイン、PROK1の発現を解析し脱落膜化への影響を検討する。また絨毛細胞株を用いて絨毛細胞の浸潤機構へのインスリンシグナル関連プロテアーゼ、サイトカインの関与を検討する。
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