研究課題/領域番号 |
22K09579
|
研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
青葉 香代 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (90468380)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 着床 |
研究実績の概要 |
着床の成立には、胚と子宮内膜間において様々な分子の発現量が変動し、複雑で巧妙な相互作用が重要であることが示唆されているものの、未だ不明な点が多い。そこで、本研究では、広く脊椎動物に存在し受精調節作用を持つダイカルシンの着床調節作用の分子メカニズムを多面的・包括的に解析し、そのことを通し、着床率を調節する革新的なリード化合物を創出することを目的とし、2022年度において下記の成果を得た。 1.ダイカルシン-ダイカルシン標的物質下流において接着能を調節する物質を同定するために、ダイカルシン標的物質存在下および非存在下のBeWo細胞(ヒト胚モデル細胞)においてRNA-Seqを行い、遺伝子の発現量を網羅的に比較解析した。その結果、複数の候補遺伝子を同定した。これら候補遺伝子の転写量の変化をリアルタイムPCRで解析する予定である。 2. ダイカルシンによるインテグリン以外の接着因子発現への影響を解析するために、ダイカルシン存在下および非存在下のBeWo細胞(ヒト胚モデル細胞)を用い、着床を調節するシグナルとして知られるセレクチン、セレクチンリガンドについてウェスタンブロットによる解析を行なっている。着床を調節する他シグナルについても解析を進める。 3.ダイカルシン-ダイカルシン標的物質作用軸によるin vivo着床率への影響を見るために非侵襲的にダイカルシン標的物質を投与する方法を確立した。性成熟したマウスを交配し、ダイカルシン標的物質を投与し、数日飼育後、着床部位の数を比較解析する実験を継続中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の当初の計画は、1;ダイカルシン-ダイカルシン標的物質下流において接着能を調節するシグナルの同定、2;ダイカルシンによるインテグリン以外の接着因子発現への影響を解析、3;ダイカルシン-ダイカルシン標的物質作用軸によるin vivo着床率への影響の解析を行なう予定であった。1について、 RNA-Seqを行い、遺伝子の発現量を比較解析したところ、複数の候補遺伝子の同定に成功した。2については、着床を調節するシグナルとして知られるセレクチン、セレクチンリガンドとダイカルシン作用軸の関係についてウェスタンブロットによる解析を行なっている。3については妊娠率、平均産仔数の異なる複数種のマウス(Balb/C、C3H)を使用し、in vivo着床率の違いについて解析を行なっている。非侵襲的にダイカルシン標的物質を投与する方法を確立した。以上のように、本研究課題は概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、RNA-Seq解析により得た複数の候補物質について、リアルタイムPCRで実際の遺伝子動態を詳細に解析する。また、in vivoにおけるダイカルシンの着床に及ぼす影響については、さらに個体数を増やすことで、多数例での解析を継続する。ダイカルシンによるインテグリン発現調節の分子機構について、インテグリン遺伝子の転写の調節によるものか、インテグリンタンパク質のターンオーバーの影響なのかを解析する。その他の着床を調節する他シグナルについても解析を進める。BeWo細胞の浸潤関連因子への影響の分子解析の実験についても条件検討後実験を開始する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学会発表がなく、旅費としての計上分の使用がなかったため。 2023年度については、2022年度の解析の一部を継続するために必要な試薬・消耗品、in vivo着床率への影響をみるための実験用動物および飼料の費用、また、ダイカルシンによるインテグリン以外の接着因子発現への影響を解析するための各種抗体費用、さらにマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)活性解析のための実験用試薬・消耗品として使用予定である。
|