研究課題
ヒトパピローマウイルス (HPV: human papillomavirus) は子宮頸癌やその前癌病変 (子宮頸部上皮内腫瘍, CIN: cervical intraepithelial neoplasia) の原因ウイルスである。現行のHPVワクチンは人工ウイルス粒子 (VLP: virus-like particle) を抗原としており、中和抗体を誘導することによってHPV感染をブロックする。我が国において公費助成によるHPVワクチン接種プログラムが導入されてすでに10年が経過し、我が国でもHPVワクチンの有効性が報告されているが、その裏付けとなる血清疫学的検討は全く行われていない。本研究では、HPVワクチン接種歴のある健常人女性・CIN患者・子宮頸癌患者を対象に、ワクチン接種年齢・接種回数・初交年齢・子宮頸部病変から検出されるHPV型のデータを収集するとともに血清中の抗VLP抗体を測定することで、疾患の発症予防に有効な血清抗体価 (発症予防抗体価) とその持続期間を推定することを目的とする。2022年度は、抗体測定用の血清をサンプリングする研究体制を構築した。本学や関連病院だけでなく、日本医療研究開発機構 (AMED) 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業の研究班「思春期女性へのHPVワクチン公費助成開始後における子宮頸癌のHPV16/18陽性割合の推移に関する疫学研究」(MINTスタディ) の症例登録施設 (全国24施設) にも協力してもらう体制を確立した。本学倫理審査委員会にて研究プロトコルの一括審査を行い、EDC(Electronic Data Captureシステム)にてインターネット上で電子的に症例登録を行うことができる体制にした。2023年度より、血清サンプリングを開始する予定である。
3: やや遅れている
自院および研究協力施設における倫理審査に時間を要した。2022年3月に「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」が改訂になった影響もあった。
今後はより多くの検体を集めることが重要である。HPVワクチン接種率が高い世代が20代後半から30代前半に差し掛かることから、期待どおりの症例登録数が確保できると考えている。
倫理審査に時間を要し血清サンプリングが始められなかったため、抗体価測定のために計上していた研究費が繰り越しとなった。
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Japanese Journal of Clinical Oncology
巻: 53 ページ: 530~533
10.1093/jjco/hyad017