研究課題/領域番号 |
22K09586
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
森 嘉生 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 室長 (40379095)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 風疹ウイルス / レセプター / 近接依存性標識プロテオミクス |
研究実績の概要 |
アスコルビン酸ペルオキシダーゼAPEX2を用いた近接依存性標識プロテオミクスが、風疹ウイルス(RuV)と細胞膜表面で結合する宿主蛋白質をスクリーニングする方法として有用であるかを検討した。RuVの構造蛋白質前駆体(C-E2-E1)を細胞内で発現させるとウイルス様粒子(VLP)が放出される。DogCatcher蛋白質(DC)と共有結合するDogTagペプチド(DT)をエンベロープ蛋白質E2およびE1のいくつかの部位に挿入し、感染性が保持されるかを検討した。さらにDC融合APEX2(DC-APEX2)と結合させた場合でも、粒子形態および赤血球凝集能が保持されるかを検討した。DC-APEX2結合VLPをRuVに対する感受性の高い胎盤絨毛癌培養細胞に接種した後、ビオチン標識し、市販の分画抽出試薬で細胞蛋白質の抽出を行った。さらにストレプトアビジンビーズに結合した蛋白質をトリプシン処理し、質量分析を行い、宿主膜蛋白質が同定されるかを検討した。E2のN末端あるいはE1のN213Q214間にDTを挿入した場合、若干感染性の低下は認められるものの、解析を行うのに十分な感染性を保持していた。このうちE2に挿入したVLPのみが効率良くDC-APEX2と結合し、さらに粒子形態および赤血球凝集能が保持されたことから、以後の実験にはこれを用いることとした。DC-APEX2結合VLPを接種した場合、ビオチンチラミド、過酸化水素、VLP依存的に胎盤絨毛癌培養細胞の蛋白質がビオチン標識されることが確認された。ビオチン標識された蛋白質は可溶画分にはほとんど存在せず、膜画分もしくは不溶画分に存在していた。膜画分からは質量分析により154蛋白質が同定され、そのうち133蛋白質はGene Ontologyでplasma membraneと記述されていた。今後はこの候補タンパク質からRuVレセプターの探索を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
風疹ウイルス受容体探索のための新規技術を確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
近接依存性標識プロテオミクスで見出されたRuV近接タンパク質群からRuVレセプターの探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体作製を外部委託しているが、作製に時間がかかっているため、年度を跨いで支出する予定となっている。次年度にはスクリーニングのための試薬や論文投稿のための支出が予定されており、全額使用する予定となっている。
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