研究実績の概要 |
婦人科癌の中でも希少癌であり、かつ非常に予後不良な難治性疾患である子宮頸部胃型腺癌 (Gastric-type cervical adenocarcinoma: GCA)において、発がん分子機構や分子標的を探索し、より効果的な治療群を見いだすことが本研究の目的となる。以前に集積していた12例と、新たに15例、計27例のGCA症例について、臨床病理学的因子 (患者年齢、手術進行期、筋層浸潤、脈管侵襲、リンパ節転移、抗がん剤感受性等)のデータを集積した。さらに、FFPEからのDNA抽出と、免疫染色 (p53, ARID1A, PTEN, ER, PR, PD-1, PD-L1, CD8等)を施行した。
1. GCAと通常型腺癌の比較:臨床病理学的検討では、これまでの報告と同様にGCAは通常型腺癌と比較し、無増悪生存期間、全生存期間共に有意に短縮した(p=0.002,p=0.024)。免疫染色で、GCAは通常型腺癌と比較し、p16の発現低下を認めた。しかしp53過剰発現について有意差を認めなかった。PD-1,PD-L1,CD8等の免疫チェックポイント関連分子については通常型腺癌と比較し、発現低下が認められた。免疫病理組織学的検討からは、GCAにおいては、免疫チェックポイント阻害薬が奏効しにくい可能性が示唆された。免疫病理組織学的検査結果と予後の関連について検討したところ、GCAにおいてPD-L1,CD8の発現低下している群で、無増悪生存期間、全生存期間共に延長する傾向にあった。 2. GCAの網羅的遺伝子解析:凍結検体が保存されているGCA症例、LEGH症例を用いて、全エクソンシークエンス (WES)解析およびRNAシークエンス (RNA seq)解析を試みた。しかし、FFPEからのDNA抽出は、GCAの腫瘍進展の形式がskip lesionであることから現在も難航している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.GCAと通常型腺癌の比較進捗状況 ①GCAにおける免疫チェックポイント関連分子発現と予後についての解析:PD-1, PD-L1, CD8の強発現はそれぞれ33.3%, 53.3%, 26.7%であった。PD-L1, CD8の発現低下している群で、無増悪生存期間、全生存期間共に延長する傾向にあった(PD-L1: p=0.585, 0.267 CD8: p=0.585, 0.267)。②GCAにおけるARID1B発現と予後についての解析:ARID1Bの強発現は80.0%と比較的高く、強発現群では全生存期間が短縮する傾向にあった(p=0.250)。 2.GCAの網羅的遺伝子解析進捗状況 凍結検体が保存されているGCA症例、LEGH症例を用いて、全エクソンシークエンス (WES)解析およびRNAシークエンス (RNA seq)解析を試みた。しかし、FFPEからのDNA抽出は、GCAの腫瘍進展の形式がskip lesionであることから現在も難航している。
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