研究課題/領域番号 |
22K09604
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西尾 浩 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90445239)
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研究分担者 |
岩田 卓 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30296652)
加藤 侑希 日本大学, 医学部, 助教 (60733649)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 卵巣がん / がん免疫逃避 / 免疫療法 |
研究実績の概要 |
1.anergyを規定する細胞集団の網羅的遺伝子発現解析 FR4/CD73の発現を認める免疫細胞を同定するためにC57BL6健常マウスより末梢リンパ節・脾臓組織を摘出し,各細胞分画をFACS AriaIIによりsortingし,RNA sequenceによる発現解析を行った.GSEA analysis, GO term analysisによりanergyとなったT細胞の発現は制御性T細胞と発現する遺伝子signatureと類似していた.またヒトの末梢血を用いてanergy細胞がどの細胞分画で増えるのかを検討した.CD4+FoxP3+の細胞分画で発現が上昇し,特に活性化TregとされるCD44highCD62Llowのpopulationで発現が上昇していることが判明した.一方,naiveCD4, naiveCD8, Bcell, NKcell, 抗原提示細胞での発現は認めなかった. 2. 腫瘍浸潤anergy T細胞の発現解析 マウス由来の癌細胞を皮下移植した各種モデルマウスを用いて,がん微小環境でのFR4/CD73の発現を解析した.melanoma細胞株であるMC38細胞を皮下移植し, 十分に腫瘍が大きくなったことを確認し,腫瘍および血液中のCD4+細胞,Treg細胞(CD25+細胞)をFACS AriaIIを用いてsortingし,RNA sequenceによる網羅的発現解析を行った.腫瘍に浸潤するanergyT細胞の発現signatureはPD1陽性CD4T細胞signatureと類似していた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究によりanergyとなった細胞集団はTreg細胞群での発現が予想されていたが,FR4陽性/CD73陽性T細胞は単にTreg細胞に特異的に発現している分子ではなく,CD4T細胞が抗原に対して反応しなくなった状態においても発現している点は,非常に新しい知 見を得たと言える.また腫瘍モデルマウスにおいて腫瘍に浸潤するTregにおいても発現が上昇することが確認され,本分子が癌免疫療法の治療ターゲットとなり うることが示された.これらの結果に基づき,網羅的遺伝子発現解析を行った結果,正常状態と腫瘍浸潤状態での遺伝子発現んが異なることが示された.これらの結果を鑑みるに,本研究の進捗状況はおおむね予定通り順調といえる.
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今後の研究の推進方策 |
1. RNA Sequencingによるデータ解析 前年度検討に用いたRNA sequenceより得られるFPKM値を用い,一定の発現量を認める遺伝子群においてKOと比較してWTで統計学的に優位な変化を認める遺伝子発現リストを作成したが,さらにこれらのデータを用いてpathway解析を含めた検討を行う. 2. 腫瘍モデルマウスでのT細胞誘導増強法の検討 In vivo腫瘍モデルマウスの検討ではヒト卵巣がんの癌微小環境を反映するマウス細胞株(ID8)を用いる.このマウスを用いて,さらに内在性腫瘍抗原特異的な免疫を誘導し,抗FR4体,抗CD73抗体の生体内でのがん細胞死を誘導できる分子標的薬や化学療法剤などの薬剤,T細胞活性化抗体(抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体)を用いて内在性腫瘍抗原に対するT細胞機能促進方法を検討する.さらにヒト卵巣がん検体,特に腹水を用いてヒト癌細胞を移植した免疫不全マウスに各種ヒト免疫細胞や間質細胞を移入して,ヒト癌細胞によるヒト免疫系への用を解析する系(ヒト化マウス)を樹立する.これらの腫瘍モデルマウスを用い,抗CD73抗体および抗FR4抗体療法の効果を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入金額が予定より少額に抑えられたため、次年度へ繰り越すこととした.本金額については消耗品の購入費用として使用予定である。
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