研究課題/領域番号 |
22K09607
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
海老沢 桂子 千葉県がんセンター(研究所), 婦人科, 主任医長 (10933210)
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研究分担者 |
丸 喜明 千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ 発がん制御研究部, 研究員 (30742754)
筆宝 義隆 千葉県がんセンター(研究所), 発がん制御研究部, 研究所長 (30359632)
田中 尚武 千葉県がんセンター(研究所), 婦人科, 診療部長 (80236611)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 子宮頸がん / 患者由来がんモデル / 3次元培養 / オルガノイド / 治療抵抗性 |
研究実績の概要 |
患者由来オルガノイド(PDO)は元の腫瘍の特徴を保持しているとされるが、子宮頸がん研究への応用例は非常に少ない。本研究では子宮頸がんPDOを樹立し、難治性子宮頸がんの治療抵抗性機構解明および治療戦略の構築を目的とする。本年度は難治性で発生頻度の低い胃型粘液性癌3例から患者由来オルガノイド(PDO) 6株を樹立した。その内訳は、2例は原発巣のみの計2株、1例は原発巣およびリンパ節転移巣から計4株である。これまでに胃型粘液性癌由来PDOの報告は皆無であり、貴重なリソースとなることが期待される。過去に樹立済みおよび今回新たに樹立した子宮頸がんPDO 18株を用いて抗がん剤5種(パクリタキセル、カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチン、塩酸イリノテカン(活性代謝物SN-38))に対する感受性を評価した。腺癌由来PDOは扁平上皮癌由来PDOに比べ抵抗性の傾向を示し、腺癌の組織亜型においても胃型粘液性癌由来PDOは通常型内頸部腺癌由来PDOに比べ抵抗性であった。このことから、樹立したPDOが臨床での病態を再現していることが示唆された。また、同一症例から樹立した複数のPDO間で薬剤感受性が異なる場合もあり、腫瘍の空間的多様性を異なる採取部位由来のPDOが反映していることが示唆された。子宮頸がんPDOを卓上走査型電子顕微鏡で観察したところ、組織型だけでなく症例間においても超微細構造に違いがみられることが明らかとなった。樹立した子宮頸がんPDOライブラリーが元の腫瘍の特徴をどの程度保持しているかを確認するため、病理組織学的解析、409のがん関連遺伝子に対するターゲットシーケンスによる遺伝子異常の検索、ハイリスク型HPV感染の有無になどついての評価を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
子宮頸部腺癌の患者由来オルガノイド(PDO)の報告は国際的にみても未だほとんどないが、今回胃型粘液性癌の複数症例からPDOの樹立に成功し、過去に樹立した通常型内頸部腺癌由来PDOや扁平上皮癌由来PDOとの比較が可能となった。また、自動分注装置を導入したため、PDOを用いた薬剤・化合物スクリーニングによる治療薬候補の同定を正確かつ効率的に実施可能な体制が整備された。
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今後の研究の推進方策 |
樹立した子宮頸がんの患者由来オルガノイド(PDO)の病理組織学的解析、ターゲットシーケンスによる遺伝子異常の検索、RNAseqによるトランスクリプトーム解析を実施し、患者由来がんモデルとしての妥当性の確認および症例間や同一症例内でのPDOの多様性について評価する。難治性子宮頸がん由来PDOを用いた薬剤・化合物スクリーニングを実施し、高い抗腫瘍効果を認める治療薬候補を選抜する。その後、選抜した個々の阻害剤について通常の薬剤感受性試験と同様にdose-response curveを作成して妥当性を確認する。引き続き難治性子宮頸がんを中心に子宮頸がんPDOの樹立とその多面的評価を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に納品(外注含む)が間に合わなかったため、次年度繰り越しとした。
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