研究課題/領域番号 |
22K09608
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
田邉 裕美 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 免疫アレルギー・感染研究部, 共同研究員 (70804277)
|
研究分担者 |
松本 健治 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 免疫アレルギー・感染研究部, 部長 (60181765)
宮戸 健二 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 細胞医療研究部, 室長 (60324844)
森田 英明 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 免疫アレルギー・感染研究部, 室長 (90365320)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | Cell fusions / human trophoblast / CXCR6 / Syncytin2 / BMP4 / 細胞性栄養細胞 / 合胞体栄養細胞 |
研究実績の概要 |
胎盤絨毛は主に増殖能と多分化能を持つ単核の細胞性栄養細胞(CTB)と、CTBが細胞融合した多核の合胞体栄養細胞(STB)から成る。STBは絨毛表面を覆う細胞で胎盤関門の実体として胎児母体間の物質&ガス交換・妊娠継続ホルモンの産生も行う。STBは増殖能がなく、STB層の維持には妊娠期間を通じCTBの融合による物質やRNA供給が不可欠であるが、融合の分子スイッチや一部のCTBが必要に応じて融合するメカニズムなどそのプロセスには不明点が多い。BMP4はヒト胚生幹細胞から誘導されたCTBを単独でSTBに誘導する成長因子として報告させているが、上記報告はマトリーゲルの存在下で行われた実験で、STB形成にBMP4がどのように関与するのか不明である。 我々は満期予定帝王切開で娩出した健常な胎盤から酵素処理によって分取したCTBを、BMP4濃度を5段階に調整した培地で培養し、96時間後の細胞融合に関わる遺伝子(Syn1, 2; GCM1)の発現量と、妊娠継続ホルモン(hCGβ)の発現量・タンパク量を測定した。BMP4はSyn2遺伝子の発現を増強し細胞融合を促進する一方、Syn1やその転写因子GCM1の発現に増減は見られず、hCGβの発現量、タンパク量にも変化は認められなかった。 融合スイッチon(AnnexinV+)とoff(AnnexinV-)のCTB発現プロファイル解析から、融合スイッチonのCTBではSyn2・hCGAと共に、細胞の移動や接着に関わるケモカインレセプターCXCR6の発現が増加していた。さらにBMP4添加から48時間後のCXCR6発現量は、添加しないものに比べ優位に増加していた。 以上からBMP4はCTBからSTBへの分化において、細胞の移動を誘導し細胞融合を促進するが、ホルモン分泌など成熟したSTBの形成には他の因子も必要とすることが解明された。
|