研究課題/領域番号 |
22K09619
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中村 圭一郎 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (90359886)
|
研究分担者 |
増山 寿 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (30314678)
小川 千加子 岡山大学, 大学病院, 講師 (50583035)
松岡 敬典 岡山大学, 大学病院, 助教 (60835057)
岡本 和浩 岡山大学, 大学病院, 医員 (80774174) [辞退]
依田 尚之 岡山大学, 大学病院, 助教 (80834928)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 子宮体癌 / RNA編集 |
研究実績の概要 |
子宮体癌はTCGAによる総合的ゲノム解析結果から4つのサブタイプに分類され,我々も遺伝子解析を鋭意遂行し,遺伝子変異の照合を行い,ゲノム解析を推進してきた。しかしゲノム変異情報だけによるPrecision Medicineには限界があり,より細やかなPersonalized Medicineへ繋ぐためにはゲノム変異だけでない新規治療戦略が必要である。癌細胞は「RNA 編集」といわれるRNA 転写後塩基の修飾が行われ,タンパクの構造変化やマイクロRNAとの親和性の変化を引き起こし,癌の悪性度を増すことが報告されているが,子宮体癌におけるRNA 編集の意義についてはいまだ未知のままである。そこで子宮体癌におけるRNA編集の意義を解析するとともにこれをターゲットとした新しい癌治療戦略の確立を目指している。現在,RNA 編集の解析が注目され始めてきているが,しかし婦人科領域でのADAR1の詳細な検討はChen Yらの報告を含めても数報しか認めず,子宮体癌研究は詳細な検討は,いまだ報告されていない。そこで本研究は,子宮体癌のRNA編集意義を解析するとともに,これをターゲットとした新しい癌治療戦略の確立を目指すことを目的にした。 我々は今まで採取したヒト検体を用いて、ADAR1発現を確認し、他の組織と比較し、癌肉腫に高発現しており、予後においてもADAR1高発現は低発現よりも予後不良であることが認められた。今後TCGAから発表された4つのサブタイプとの相関関係や子宮体癌におけるADAR1のメカニズム解明を行い、子宮体癌とRNA編集関係を明確にする予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
子宮体癌におけるRNA 編集の意義についてはいまだ未知のままであり、そこで子宮体癌におけるRNA編集の意義を解析するとともにこれをターゲットとした新しい癌治療戦略の確立を目指している。従来,DNAからRNA への転写,タンパクへの翻訳は,いわゆる「セントラルドグマ」として絶対的なカスケードとして信じられてきたが,近年,転写された RNA において,特定の塩基が他の塩基へと変換される「RNA 編集」の現象が発見され,DNA の塩基配列が絶対的なものではないことが徐々に認知されてきた。実際に臨床検体を用いた評価においてもAZIN1 における RNA 編集が促進されている癌患者の予後が悪化することが報告され,癌組織における RNA 編集は癌患者の予後を予測するバイオマーカーとなるとともに新たな癌治療のターゲットになると期待が高まり,現在,世界レベルで癌における RNA 編集の解析が注目され始めてきている。しかし婦人科領域でのADAR1の詳細な検討はChen Yらの報告を含めても数報しか認めず,子宮体癌研究は詳細な検討を現在鋭利遂行している。
|
今後の研究の推進方策 |
RNA編集によってRNA転写後の塩基の修飾が行われ,インターフェロン経路の変化を引き起こすことが知られており,RNA編集酵素の一つであるAdenosine Deaminase family Acting on RNA1 (ADAR1)について,今回研究を行っている。近年肝細胞癌,食道癌,胃癌,大腸癌などの癌腫において報告されてきたが,子宮体癌におけるRNA編集の検討は未だ報告がなく,子宮体部癌肉腫について,詳細にRNA編集の意義について検討している。子宮体癌症例を解析した結果,ADAR1およびantizyme inhibitor 1(AZIN1)の発現レベル上昇は組織型に関連しており,ADAR1とAZIN1 RNAレベルがいずれも上昇していた症例は予後不良であることを突き止めた。 ADAR1 ノックダウンによりインターフェロン経路に作用し,Bakとアポトーシスが増加を認めて,今後も詳細な検討を継続する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行上、ヒトサンプルでのRNA編集解析を次年度実施することとなり、その費用に充当する。
|