研究課題/領域番号 |
22K09642
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木瀬 康人 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90778531)
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研究分担者 |
澤田 健二郎 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00452392)
橋本 香映 大阪大学, 医学部附属病院, 特任准教授(常勤) (90612078)
小玉 美智子 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70791391)
中村 幸司 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (00900151)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 婦人科がん / 卵巣がん / 子宮体がん / ARID1A / ドラッグスクリーニング / 3次元培養 / PDX |
研究実績の概要 |
本研究では、予後不良である抗がん剤抵抗性卵巣癌・子宮体癌に高頻度に認めるARID1A変異に着目し、この遺伝子変異をもつ癌に特徴的な脆弱性を利用した新しい個別化医療の開発を目指している。 まず、我々は大阪大学薬学研究科との共同研究にて、FDA承認された薬剤ライブラリーを用いたLarge scale drug screeningを行った。このscreeningでは、ARID1A変異を持つ (ARID1A タンパク低発現) 卵巣明細胞癌細胞株OV207と子宮体癌細胞株HEC1Aと、それぞれの細胞株のDoxycycline誘導性ARID1A強制発現株を用いて、各薬剤を三日間暴露し、WST assayによって比較検討した。1134種の薬剤のうち、OV207とHEC1Aの療法でCell viabilityが50%以下となる化合物63種を同定した。そのうち、再現性を確認し、Doxycycline投与あるいは非投与での差が30%以上となる薬剤を11種検出した。現在これら候補薬剤の抗腫瘍効果、ARID1A発現の有無との関連についてIn vitroで検討を行っている。 また今後動物実験モデルでの検討で用いる、婦人科癌患者由来腫瘍 (Patient-derived xenograft; PDX) 同所移植マウスモデルの作成も行っている。現在のところ、卵巣癌PDXを20モデル、子宮体癌PDXモデルを3モデル移植した。PDX腫瘍の回収率は約75%であり、順調にPDXの樹立を行うことが出来ている。今後これらのモデルのARID1A変異の有無の確認、AIRD1Aタンパクの発現を確認する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究「PDXとドラッグスクリーニングによるARID1A変異婦人科がんの個別化医療開発」では、以下の4つの研究計画を挙げている。 「1.ARID1A変異型ならびにARID1A野生型の婦人科癌PDX同所移植マウスモデルの確立」については、現在までに多くの卵巣癌および子宮体癌PDXモデルの樹立に成功しており順調に進展している。「2.化合物ライブラリーを用いたLarge scale drug screeningによりARID1A変異を持つ婦人科癌細胞に特異的に抗腫瘍効果を示す候補薬剤を同定する」についても、drug screeningは終了し、この結果に基づいた候補薬の絞り込みの最終段階を現在行っており、順調に進展している。 今後、1と2を基に、「3.候補薬剤の抗腫瘍効果をIn vitroとEx vivoにおいてARID1A変異の有無で比較検討し、さらにARID1A変異癌に著効する分子メカニズムを解析する」と「4.婦人科癌PDXマウスモデルを用いて、ARID1A変異癌に選択的に作用する薬の抗腫瘍効果を確認する」の計画を推し進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
Large scale drug screeningによりARID1A変異を持つ婦人科癌細胞に特異的に抗腫瘍効果を示す候補薬剤の最終絞り込みの検討を行ったのち、多くの卵巣癌・子宮体癌細胞株を用いて二次元でのIn vitroモデルで抗腫瘍効果を検討する(MTS assay、Colony formation assay、Apoptosis assay等)。そして、我々が樹立したPDX腫瘍を利用した三次元オルガノイド培養によっても抗腫瘍効果を確認する。 ARID1A変異癌に特異的に候補薬剤が奏功するメカニズムについては、In vitroモデルより抽出したRNAを用いたRNA-seqにより、ARID1A変異型とARID1A野生型の間での遺伝子発現の差異を網羅的に解析して検討する。 さらには、卵巣癌・子宮体癌細胞株のXenograftマウスモデルならびに我々の作成したPDXマウスモデルを用いて、ARID1A変異癌に選択的に作用する薬の抗腫瘍効果をIn vivoにて確認する。
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