研究実績の概要 |
慢性炎症性疾患であるIgG4関連疾患の本態は線維化であり、唾液腺においては線維化により既存の唾液腺組織が消失しその機能が低下する。IgG4-SAの線維化誘導の特異的なメカニズムを明らかにすることで、線維化を抑制する治療の標的を明らかにすることができる。我々はIgG4関連唾液腺炎(IgG4-SA)の線維化のメカニズムはIgG4陽性形質細胞を含むB細胞が関与していると仮説を立てた。 IgG4-SAと慢性唾液腺炎(Chronic-SA)の線維化の分布を調べるためにHE染色標本、Azan染色標本とElastica-Masson染色標本を作製して観察した。IgG4-SAの線維化の分布は発達した二次リンパ濾胞の周囲に観察され、Chronic-SAの線維化の分布は拡張した同館周囲に観察されたまた、IgG4-SAの2次リンパ濾胞周囲には紡錘形の線維芽細胞が増生していた。 線維芽細胞のサブタイプを同定するために、IgG4-SA 3症例およびChronic SA 3例において、CD29 (integrin β1), FAP (fibroblast activation protein), FSP (fibroblast specific protein), α-SMAを染色し、陽性となる線維芽細胞の数をリンパ濾胞周囲と導管周囲に分けて検索した。IgG4-SAではリンパ濾胞周囲にαSMA(+)FAP(+)S100A4(+)CD29(-)の線維芽細胞が増生していた。出現する線維芽細胞はIgG4-SAとChronic-SAで類似していた。さらにIgG4-SAに特異的な線維芽細胞のマーカーの検索のために、IgG4-SA 3症例およびChronic-SA 3症例のFFPE検体から、RNA抽出とRNAシークエンスを計画し、実験を準備中である。
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