研究課題/領域番号 |
22K09683
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
石永 一 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (50335121)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | miR-21 / 頭頸部扁平上皮癌 / 化学放射線療法 / TGFβ / 繊維化 |
研究実績の概要 |
我々の研究は、miR-21インヒビターが頭頸部扁平上皮癌における化学放射線療法の治療効果を高め、かつ有害事象である組織の繊維化を抑制する効果があるかどうかを検証することを目的としている。我々の先行研究において、すでにがん細胞を用いたin vitroの実験ではmiR-21インヒビターは放射線やシスプラチンによる抗腫瘍効果を増強させることを証明している。
2022年度は、Balb/Cヌードマウスを用いてmiR-21インヒビターの頭頸部扁平上皮癌に対する効果を検証した。まず、マウスの背部にFadu細胞を注射し、3週間経過観察した。その後サイズが均等になるように2群に分け、1群にはコントロールmiR インヒビターを、もう1群にはmiR-21インヒビターを尾静脈から10日毎に計2回注射して、腫瘍を縮小させるかどうか検討した。また腫瘍内のmiR-21発現が抑制されるか、アポトーシスを誘導するかどうかを検討した。両群9匹ずつ割り当てて検討をおこなったところ、miR-21インヒビタ―を注射した群で有意に腫瘍は縮小し、腫瘍内のmiR-21発現も有意に抑制した。またアポトーシスも有意に誘導された。この研究から、1)マウスを用いた動物実験で、miR-21インヒビターは頭頸部扁平上皮癌を縮小させる効果があることを証明した。2)miR-21インヒビターの静脈内投与にて、有用なdrug deliveryが得られることを証明した。
これを踏まえて、2023年度は、マウスに放射線、あるいは放射線・抗がん剤で治療し、咽頭、頸部に組織の繊維化を起こさせるモデルマウスを作成する予定である。それができたら、miR-21インヒビターを投与し、繊維化を抑制するかどうかを検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々の研究は、miR-21インヒビターが頭頸部扁平上皮癌における化学放射線療法の治療効果を高め、かつ有害事象である組織の繊維化を抑制する効果があるかどうかを検証することを目的としている。これまでin vitroの実験では、miR-21インヒビターはがん細胞を抑制し、かつ放射線の効果や、抗がん剤の効果を増強させることはすでに確認していたが、マウスでも同等な結果が得られるかどうかは不明であった。 今回の研究では、マウスに扁平上皮癌細胞を移植し、miR-21インヒビターを投与したところ、コントロールmiRインヒビターに比較して、有意に腫瘍に対する良好な抑制効果がみられた。また腫瘍内のmiR-21発現も有意に抑制しており、かつアポトーシスも有意に誘導していることが判明した。 投与方法に関しても、静脈内投与、腫瘍内投与、腹腔内投与などが選択肢として考えられたが、実際の臨床を考えると、静脈内投与が実際的であり、同投与での検討を行ったが、本研究では有効で効率的ななdrug deliveryを得られたと考えられた。 現在のところ、計画していた研究の第一段階が予想通りの結果を得て終了できており、次の化学放射線治療の繊維化に対するmiR-21インヒビターの効果を検証する研究に移行することができる。 以上より、現在のところ研究は順調に遂行できており、研究結果も予想通りであり、進捗状況としては良好であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、2023年度は、マウスに放射線、あるいは放射線・抗がん剤で治療し、咽頭、頸部に組織の繊維化を起こさせるモデルマウスを作成する予定である。まず第一に、至適照射量や照射後の繊維化が起こってくる至適時期の検討を行う予定である。照射後の繊維化には1か月から最大6か月程度と時間を要することが予想されるため、ここである程度研究の時間を割く必要があると考えている。それがクリアできたら、次に抗がん剤を併用し、組織の繊維化が増強するかどうか、増強するなら至適量はどうかを検討していく予定である。 放射線による繊維化のモデルマウス、ならびに化学放射線治療による繊維化のモデルマウスが作成できたら、最終的にはmiR-21インヒビターを静脈内投与し、繊維化を抑制するかどうかを検証する予定である。舌、咽頭、頸部の組織中のTGFβやCollagen, IL-1βやTNFα、CTGFなどをPCR、ウエスタンブロッティングで検討する予定である。、また、ヘマトキシリンエオジン染色とMasson’s trichrome染色で繊維化を検討する予定である。 研究を遂行する上での課題としては、マウスの種類などによって繊維化の程度が違ってくることが予想されるため、C57BL/6野生型マウスを使うか、これまでのBALB/Cヌードマウスを用いるか、モデルマウスがうまく作成できないようであれば、SDラットを用いることも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が順調に進み次年度分の研究に入ったため、30万円の前倒し請求をしたが、年度末に別予算で試薬などの購入ができたため、今回は結果的に繰越金が発生した。次年度はマウスの購入やmiR-21インヒビターの購入、トランスフェクション試薬などの購入に当該助成金を充てる予定である。
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