研究課題
頭頸部癌をはじめ様々な癌種で腫瘍不均一性と腫瘍組織内における癌細胞の多様性、免疫細胞の組成や性質が、癌の進展や治療抵抗性と関わることが知られてきた。申請者はこれまでに、一枚のホルマリン固定パラフィン包埋切片から12-14種類のエピトープを免疫組織化学で解析できる多重免疫染色、その画像定量化技術image cytometryを開発し、2枚の切片から13種類の癌細胞悪性形質、10種類の細胞の組成や性質を定量的に解析し、癌の亜分類や予後と相関する癌微小環境特性を報告してきた。本課題は、この手法を発展させ、癌組織の臓器レベルから単一細胞までの腫瘍不均一性を定量的に解析し、治療中の腫瘍不均一性の経時的変化を調べ、腫瘍不均一性に基づく再発危険因子の同定と組織生検の最適化を目的とする。従来の手法では困難だった頭頸部癌の腫瘍不均一性を明らかにし、限られた組織から再発危険因子を効率的に評価する基盤を構築し、頭頸部癌治療の最適化を目指す。令和4年度は腫瘍組織の臓器・組織構造レベル・単一細胞レベルでの不均一性解析、空間的腫瘍不均一性と予後の検討について検体の多重免疫染色が進行した。これらの研究成果の一部を総説4編、原著論文4編にて報告し、国際学会1st joint meeting of Tri-Head and Neck Society 2022ならびに1題、第26回日本がん免疫学会、第46回日本頭頸部癌学会、第34回日本内分泌外科学会、第73回気管食道科学会総会ならびに学術総会でのシンポジウム・招待講演にて発表した。
2: おおむね順調に進展している
令和4年度に予定していた多重免疫染色による不均一性解析が進行し、次年度以降のマウスモデルにむけた準備も予定通り進行した。
・腫瘍組織の臓器・組織構造レベルでの不均一性解析:免疫細胞・癌細胞:中咽頭癌切除検体について、免疫細胞・癌細胞パネルを用いて解析を行う。まずは組織構造レベルでの不均一性を調べるため、病理切り出し図の最大割面切片における全エリアを解析し、癌細胞をpanCKで標識し、すでに開発済の癌包巣と間質を自動分類するアルゴリズムTissue segmentationを用いて、癌包巣中央部、辺縁部、周囲間質の免疫特性を検討する。・単一細胞レベルでの不均一性解析:免疫細胞・癌細胞 :上記にペムブロリズマブ治療前生検検体48例も加え、腫瘍中央部または辺縁部に焦点をあて、強拡大した視野において、先行文献で使用した環境学の統計学的手法を用いて、個別の細胞間の距離を解析する。・空間的腫瘍不均一性と予後の検討:上記解析に基づき、臓器から単一細胞レベルまでの階層において、予後・治療効果と相関する腫瘍不均一性の因子を探索する。・マウスモデルでの検討:申請者が使用経験を有するマウス同系扁平上皮癌移植モデルであるC3H/SCCVIIモデルを用いて、実臨床に即してパクリタキセル、シスプラチン、5-FU、抗PD-1抗体(マウス用)を順次または同時投与し、非投与群との比較を多重免疫染色により行う。均てん化された腫瘍・治療環境において、薬物療法が与える免疫細胞的腫瘍不均一性への効果を検討する。
上記の通り当初の研究計画通りに進行したが、70,458円が端数として生じたため、次年度の免疫組織化学解析で使用する抗体購入費に当てる予定である。
すべて 2023 2022 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 8件) 備考 (1件)
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