研究課題
頭頸部癌をはじめ様々な癌種で腫瘍不均一性と腫瘍組織内における癌細胞の多様性、免疫細胞の組成や性質が、癌の進展や治療抵抗性と関わることが知られてきた。申請者はこれまでに、一枚のホルマリン固定パラフィン包埋切片から12-14種類のエピトープを免疫組織化学で解析できる多重免疫染色、その画像定量化技術image cytometryを開発し、2枚の切片から13種類の癌細胞悪性形質、10種類の細胞の組成や性質を定量的に解析し、癌の亜分類や予後と相関する癌微小環境特性を報告してきた。本課題は、この手法を発展させ、癌組織の臓器レベルから単一細胞までの腫瘍不均一性を定量的に解析し、治療中の腫瘍不均一性の経時的変化を調べ、腫瘍不均一性に基づく再発危険因子の同定と組織生検の最適化を目的とする。従来の手法では困難だった頭頸部癌の腫瘍不均一性を明らかにし、限られた組織から再発危険因子を効率的に評価する基盤を構築し、頭頸部癌治療の最適化を目指す。令和4年度は腫瘍組織の臓器・組織構造レベル・単一細胞レベルでの不均一性解析、空間的腫瘍不均一性と予後の検討について検体の多重免疫染色が進行した。これらの研究成果の一部を総説1編、原著論文1編にて報告し、国際学会(7th World Congress of the International Federation of Head and Neck Oncologic Societies、2023 Combined Webinar of APTS and JSHNS、16th Taiwan-Japan Conference on Otolaryngology-Head and Neck Surgery)での4回のシンポジウム講演ならびに国内学会で8回のシンポジウム・招待講演にて発表した。
2: おおむね順調に進展している
令和5年度に予定していた臓器・組織構造レベルでの不均一性解析とマウスモデルでの腫瘍不均一性経時変化の解析が進行し、次年度以降の追加染色、マウスモデルで得られたデータ解析にむけた準備も予定通り進行した。
・腫瘍組織の臓器・組織構造レベルでの不均一性解析:前年度までに進めてきた癌包巣と間質を自動分類するアルゴリズムTissue segmentationを用いた、癌包巣中央部、辺縁部、周囲間質の免疫特性の検討を踏まえ、次に、臓器レベルでの不均一性を調べるため、74例中15例程度において、病理切り出し図に基づいて5mmないしは1cm毎の連続切片を取得し、垂直または水平方向における不均一性を解析する。・単一細胞レベルでの不均一性解析:前年度から進めてきた環境学の統計学的手法を用いた、個別の細胞間の距離解析をさらに進める。細胞間の距離のスコア化処理に成功しており、この手法の最適化を進める。・空間的腫瘍不均一性と予後の検討:上記解析に基づき、臓器から単一細胞レベルまでの階層において、予後・治療効果と相関する腫瘍不均一性の因子を探索する。・マウスモデルでの検討:前年度まで行ってきたマウス同系扁平上皮癌移植モデルであるC3H/SCCVIIモデルを用いた薬物療法が与える免疫細胞的腫瘍不均一性への効果を引き続き進める。
上記の通り当初の研究計画通りに進行したが、230,876円が端数として生じたため、次年度の免疫組織化学解析で使用する抗体購入費に当てる予定である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (35件) (うち国際学会 9件、 招待講演 17件)
JOHNS
巻: 39 ページ: 1317~1320
10.24479/ohns.0000000832
Koutou (THE LARYNX JAPAN)
巻: 35 ページ: 102~106
10.5426/larynx.35.102