研究実績の概要 |
今年度は、有毛細胞内で観察されるGTTRの蛍光強度を指標に、有毛細胞への取り込まれるGTTRの定量評価を試みた。LPS 1mg/kgまたは同量のPBSを静注した翌日にGTTR投与し、24時間後に安楽死させ、蝸牛感覚上皮を観察した。LPS投与群ではPBS投与群に比較し、蛍光強度が高い傾向が見られたものの、有意な差は確認できていない。この原因として自家蛍光のばらつきが影響していることが考えられたため、自家蛍光の少ない条件を検討している。並行して、カナマイシン(KM)投与により出現する難聴がLPS投与により増悪するか確認することとした。KM耳毒性モデル作製のため、二通りのスケジュールでKM投与を試みた。スケジュール1では、PBSまたはKM 700mg/kgをDay 1, 2, 3, 4, 5, 7, 8, 9, 10, 11, 14, 15, 16の朝と晩に皮下注射した。スケジュール2では、PBSまたはKM 700mg/kgをDay1から12まで連日で皮下注射した。いずれのスケジュールにおいても、Day 1, 5, 10にPBSまたはLPS 1mg/kgを静脈内投与した。KMおよびLPS投与前後と、3-4週間目にABRを測定した。いずれのスケジュールでも、LPS-KM群では全例、PBS-KM群では一部のマウスでABR閾値の上昇を認めた。一方、LPS-PBS群、PBS-PBS群ではABR閾値の上昇を認めなかった。今後、個体数を増やしてABR閾値の変化の定量評価を行うとともに、ABR測定後に安楽死させ、蝸牛感覚上皮の有毛細胞の障害を定量評価する予定である。
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