研究課題/領域番号 |
22K09704
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
清水 志乃 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (50505592)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | SARS-CoV-2 / カニクイザル / 嗅覚障害 / 嗅上皮 / ブレインフォグ / COVID-19 |
研究実績の概要 |
COVID-19で生じる嗅覚障害のメカニズムはいまだに十分解明されていない。SARS-CoV-2に対するワクチンや治療法開発のために感染モデルとして利用された非ヒト霊長類のカニクイザルあるいはアカゲザルの剖検組織を嗅覚障害の発症機序解明を目的に観察した。 嗅裂を含む鼻腔全体を観察するために頭部組織を固定後、脱灰液に浸しながらトリミングを行った。まずヒトとの解剖学的な差を観察した。ヒトの嗅球は前頭蓋底の篩板に全体が横たわる状態で存在するが、カニクイザルの前頭蓋底の前方には嗅球が嵌入するくぼみが存在し嗅球はそのくぼみに陥頓する状態で存在した。くぼみの尾側に篩板が存在した。篩板を含む鼻腔全体を観察するために、前頭蓋底から上顎の組織全体を脱灰しメス刃でトリミングした。EDTA処方の脱灰液を交換しながら6-8週間に浸した。鼻甲介の構造はヒトと共通しており、ethmoturbinateとmaxilloturbinateの二つの鼻甲介が存在し、一部の個体では第三の鼻甲介も存在した。副鼻腔は両側の上顎洞のみで前頭洞や篩骨洞は存在しなかった。両側の嗅裂を含む前頭蓋底から鼻腔底までの前額断切片を作成した。非感染個体として、人道的安楽死に至った2個体の組織も同様の方法で処理し保存した。HE染色で両側の嗅上皮が切片に含まれることを形態学的に確認した。固定・脱灰・トリミング・包埋・薄切方法を定めて、組織の収集を行った。 検討に用いた感染モデルの多くはデルタ株、武漢株に感染したモデルであった。予備検討としてSARS-CoV-2 N蛋白に対する免疫染色を行い、鼻腔の呼吸上皮・嗅上皮に感染細胞が存在することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予想していた組織の切り出し方法では嗅上皮を含む鼻腔を一塊に摘出することは困難であることが、実際の組織を観察して判明した。前頭蓋底から上顎の大きな組織から目的の位置を切り出すために、ゆっくりと脱灰しながら厚い顔面の骨と軟部組織を除去する必要があり、包埋までに6-8週間を必要とした。剖検組織を利用しているため、組織の入手は不定期であり、一定数の検体を収集するためにさらに時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
検体の収集と処理に想定以上の時間がかかってしまったが、現在では一定の方法で安定した標本が採取可能となった。予備検討の結果をもとに、ウイルス感染早期の鼻腔組織に生じる炎症性変化について評価する。また、ウイルスの感染早期の鼻腔での局在を評価する頭蓋内感染の可能性が明らかとなれば、脳組織についてもウイルスの局在を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
検体収集と処理に想定以上の時間要したため、使用予定であった助成金を使うことができなかった。予定していた検体収集と予備検討はほぼ終了したため、翌年度からの研究で今年度分の助成金を使用する予定である。
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